聖典講座『口伝鈔』(1)
『御伝鈔』が終わって4月から同じ覚如上人の『口伝鈔』を読んでいる。これがとても勉強になり、かつ面白い。華光に流れる法脈をヒシヒシと感じさせてもらっている。
『口伝鈔』は、その冒頭に「本願寺の鸞聖人、如信上人に対しましまして、をりをりの御物語の条々」とあるように、「本願寺のご開山である親鸞聖人が、孫である如信上人に対して機会のあるごとにお話された物語を(曾孫である私=覚如が承り)、そのいくつか列挙いたします」と始まる。いわば、もう一つの『歎異抄』なのである。
4月に総説を行ない、5月から第一条から第四条まで進んできた。
5月 第一条「安居院参向章」
(この 第一条と第九条だけとには標題はついていない。第一条「安居院参向章」の安居院とは、法然聖人の高弟「聖覚法印」のことで、朝廷が専修念仏を聖覚法印に批判させようという動きがあったことを察した法然聖人が、その使者として親鸞聖人を聖覚法印のもとに向かわせて、説得させようという時のエピソードが主題である。多くの法然門下の中でも、親鸞聖人こそが法然聖人が信任していた門弟であったことを、他の門弟(聖覚法印や西意善綽房)の言葉を通して明示される章である。聖覚法印を親鸞様は尊敬され、関東門弟たちにもその書の拝読を勧めれているのでも有名である。ところで、法然様の伝記である『法然上人行状絵図』は「四十八巻伝」とも言われるが、弥陀の本願に即して四十八巻もある。その第十八巻では『選択集』など法然さまの大切な教義が説かれるが、十八卷目が十八願に対応しているからだろう。そうすると、第十七巻は聖覚法印のエピソードが収めれている。比叡山の説教師として天下一と称された聖覚法印が、天台宗の高僧でありながら、法然さまに随順し他力念仏の教えを説かれたこととを考えると、これは十七願の諸仏称讃に対応するのではないかと味わっている。)
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