2月の月利会~共感的理解~
カウンセラーの対人的態度としての第三番目は共感的理解である。
「共感」という言葉が巷に溢れ、共感(もしくは共感力)がキーワードになっている時代だと思う。SNS上では、「いいね!」が連発されて、共感されたい、また「分かってもらいたい」と願う人達で溢れている。しかし、この場合の共感とは、同情だったり、同意だったり、またはほんとうに私の気持ちなのか、相手の気持ちなのかも分からないままでも、とにかく批判や反対ではなく、「同感」という言葉で安心する程度のものが、大半ではないだろうか。
しかし、ここでの共感的理解は、明らかに単純な同意でも、また自分の感情と相手の感情をごちゃ混ぜにして同情的に理解することでも、もちろん相手を知るために、あれこれ詮索して原因を探ったりするような診断的な理解とは明らかに一線を画している。
この点を、西光義敞先生の『暮らしの中のカウンセリング』では次ぎようにまとめておられる。
共感的理解は、クライエントと共に、クライエントが感じているかのように感じとる、しかもクライエントの感情に中に巻き込まれないような理解のしかたです。クライエントの心の内側に入りきって、クライエントの目で周囲や自分自身をみればこういうふうにみえるのだなー。クライエントの身になってみればこういう感じがするんだなーと、「感じ」を共有しあうかのようなわかり方です。こういう理解のしかたを「内部的照合枠」によるクライエント理解といいます。
共感という感情に関わる問題なので、まずは自分と他者の気持ちに気づき、敏感でそれを分けつつも、決して「あなたはあなた」「私は私」と冷たく分かつのでなく、クライエントの私的世界を自分のことのように、それでいてその感情に巻き込まれるのではなく、「あたかも~のごとく」を見失わないで聞いていこうという態度なのである。そのとき、相手を外からの情報で客観的に理解しようという「外部的照合枠」(外側の枠組み)ではなく、どこまでも、クライエントの内側にある「内部的照合枠」による理解によるのだ。相手の「内部的照合枠」による理解というところが、大きなポイントであると思う。
また他のカウンセラー態度条件である、自己一致や受容(無条件の肯定的配慮)とも有機的なつながり合っているのは言うまでもない。知的な理解にとどまらず、たゆまぬ努力による訓練や経験を通して、体験的にその態度を身につけていくことが必要なのである。たとえ道は険しくても、だれでも、またどんな時でも、その努力の第一歩を踏み出すことこそ、大切なのである。まず、体験的な一歩を踏み出そう。
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