映画『名付けようのない踊り』
国際的ダンサーである田中泯を追いかけたドキュメンタリー『名付けようのない踊り』 を見る。ぼくが、初めて田中泯の演技を見たのは『メゾン・ド・ヒミコ』という映画だったと思うが、その映画の犬童一心監督のドキュメンタリー作品だ。一般にはダンサーというより、映画、ドラマで存在感のある俳優として有名だ。1年前の2月、近く(南区東九条)の小劇場で公演があったのに見逃したのが、残念だ。
ダンサーと言っても、テレビで見るようなダンスや舞踏のイメージとはずいぶん異なったものだ。場踊りという、その場のフィールド(土)と観客と、その場でおこるすべてに身を委ねて躍動する、いわば身土一如としてのありように感動した。
2年間の世界ツアーを追いかけたものだか、単なる実写ではなく、その生い立ちなどの重要な子供時代のエピソードは、山村浩二のアニメーションとして描かれていた。また日本では、たとえばすべての毛を剃り陰部に包帯のみを巻いた裸で踊る姿は異端で、何度も逮捕をされる一方、国際的には高い評価を受けた行くもの、決して群れることなく孤高の存在として立っていることなど過去のエピソードや数々の出会いも紹介されるなど、2年間の活動を追いかけるというより、田中泯の半生期の綴る映画だった。
不自然なダンサーとしての鍛え方ではなく、大自然のなかで野良仕事をしてできてくる身体で踊ると決め、生活、踊りが一体化していること。さまざまな異質、もしくは同業との出会いが、いかに大きな力になるのか。出会うべき時に出会えることこそ、人生の幸せだなと感じさせらるなど大いに刺激をもらった一本だった。
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