濱口竜介監督『ハッピー・アワー』
2015年に封切られた濱口監督の『ハッピー・アワー』の評判を耳にしていた。が、その時は、見ることはなかった。演劇ワークショップに集う素人劇、5時間を超える長尺ということが、二の足を踏ませたのだ。
それが、『ドライブ・マイ・カー』と『偶然と想像』が世界中で高評価を得ていることもあって、お正月に6日間、再上映されることなった。その間、何作か濱口作品を観ているので抵抗もなくなった。上映時間は休憩が挟まれて計5時間45分。でもうまい具合に2度の休憩が入り、とても楽だった。
それ以上に内容が素晴らしかった。30代後半、それぞれの仕事や家庭、異なる環境の中で生きる4名の女性たちのリアルな生きざまを共に生きるような不思議な感覚を味わった。もちろん、素人が演じる科白や演技に未熟さところもあったし、また退屈する場面もあったけれども、それを超えて伝わってくるリアルリティは何だろうか。ドキャメンタリーではないのにまるでその自身の人生が立ち上がったくる感覚だ。
ちょうどサイコドラマのようなもので、演技ではなくても、その人の人生が立ち上がり、感情が動き、それが見るものを揺さぶるような感覚に通じていた。演技だからこそ伝わる真実があるという体験でもる。
また、4名の女性だけでなく、それぞれのパートナーや恋人たち、男性側にも共感する部分も多かった。最初、まったく理解できなかったと生物学者を話を丁寧に聞いていくと、どことなく頷ける部分も出てきたのは、驚いた。
ところで、ぼく感銘をうけた本に、野口体操の野口三千三先生の「かちだに貞(き)く)」「おもさに貞(き)く」という本があるが、ここではちょっとあやしげな講師が、「重力にきく」というワークショップを開催。自身も実際に体験したり、またやってもらったりするワークも入っていたし、その後のシェーアリング(分かち合い)も、リアリティーがあった。セリフではく、実際に体験した感想を語っていたのではないか。からだの中心にきく、声にならない声で伝える。真のコミニケーションとは何かが問われいる。
三部目の小説の朗読といい、この場面といい、長尺映画ならではで一部の触りだけなく、そのWSに実際に参加しているかのような時間配分で、このあたりも新鮮だった。
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