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中国映画『少年の君』

  ピュアな恋愛青春映画でありながら、中国社会問題を鮮烈に描写する『少年の君』

  これはほんとうによかった。

 主演女優の周冬雨(チョウ・ドンユイ)が、素朴な高校生にしか見えない! 前作(3年前)には子供を育ていたというのに…。

 学業は優秀だが、母子家庭の経済状態は悲惨で犯罪ギリギリな仕事を行う母と、いじめで自死した同級生をかばったことから、次ぎのいじめの対象として陰湿ないじめ(犯罪)を受ける女子高校生と、天涯孤独なチンピラが反発しながらも魅せられ、孤独な魂を抱えた同士深い絆で結ばれていく。そして、大きな事件ま巻き込まれるが、自らを犠牲してまでも相手を救おうとする。しかし、事実を追求しようとする若い刑事。彼は、彼女が起こした事実を誤魔化さず引き受け、裁きを受けることが真の救いだと信じている。
 もう還暦間際のぼくの中にも、こんなピュアな純愛映画にジーンとくる気持ちがまだあることに驚いた。少し離れて座っていた中年女性が、声を出して泣かれたのにも驚いたけど。

 あわせて、熾烈な受験競争や壮絶ないじめ、そして貧富の格差によって切り捨てられる人々など、現代の中国社会の問題点も浮き彫りにする社会ドラマでもある。日本でも大学受験の厳しさや学歴格差が問題になっているが、中国や韓国の比ではない。中国や朝鮮半島の王朝では、古来(隋の時代、つまり聖徳太子の時代)より20世紀初頭まで続くのが、「科挙」という官吏登用試験がある。もう一つが「宦官」という賎しい身分ものは、自ら去勢して権力に近づく制度があった。なぜか、先進国の中国を真似た日本なのに、この制度は導入されていない。中華では、異民族王朝でも引き継がれ、近代化によってやっと廃止されるが、受験戦争の激しさ、学閥のさは、現在も中国や韓国つづいているのも、科挙の影響だとぼくは考えている。法律は代わっても、人々の精神のにまで影響するの簡単ではない。
 
 とてもいい映画だったので、関連上映されていた同じ監督、主演女優の『ソウルメイト』~七月と安生~ も観た。こちらは、女友達の青春グラフィテー。タイトルどおり、女性同士のソウル(魂)レベルでの絆。同性同士、男女間の違いはあってても、両作品には地続きのテーマがしっかりしているのが、見どころだ。

 

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