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『御伝鈔』上巻まとめ

『御伝鈔』も前回で上巻が終わり、今回から下巻にはいるので、簡単に上巻のまとめと、下巻の大要をお話した。

『御伝鈔』を大きく窺うと、

 上巻は、親鸞聖人の自利の徳を嘆じる
     覚如上人は、聖人の三十五歳までの行状を自利の徳と御覧になった。

 下巻は、親鸞聖人の利他の徳を讃ずる
     流罪以降の東国での伝道活動を化他の徳とみられている。      
 
 加えて、『御伝鈔』は親鸞聖人の伝記であって、親鸞聖人こそが法然聖人の真意を継承する者であり、その浄土真宗の正しい教義を顕す目的をもって書かれている。その場合、
 上巻は、法の真実を顕し、
 下巻は、機の真実を顕している。                     

 その観点からみると、上巻第一段「出家学道」と、第二段「吉水入室」は、聖人が聖道門を捨て浄土門に帰入し、第三段「六角夢想」に至って、観音菩薩(聖徳太子)と勢至菩薩(法然聖人)の引導によって真宗を興行されたこと。そして、第五段「選択付属」で法然聖人より『選択集』を付属され、そして法然門下における第六段「信行両座」と第七段「信心諍論」の二つの諍論を通して、親鸞聖人こそが法然聖人の真の後継者であり、信心為本、他力廻向の真宗教義の核心を宣揚されるのである。その中心となるのは、第六段「信行両座」であろう。
(第四段「蓮位夢想」・第八段「入西観察(定禅夢想)」は、帰洛後の晩年の聖人の行状で、共に内部、外部から聖人が弥陀の化身であることを示される)
 
 これから窺う下巻は、以下の七段に分かれるが、利他の徳、機の真実を顕すとすると、その中心は、第三段「山伏済度」で山伏弁円の救済ということになる。
(1)師資遷謫 (2)稲田興法 (3)山伏済度 (4)箱根霊告 (5)熊野霊告 (6)洛陽遷化 (7)廟堂創立
 最後の(7)だけは、親鸞聖人ご一生ではなく、ご往生後の大谷祖堂の建立について。本願寺こそが親鸞聖人の正統の後継者であることを示そうとされたものである。

 

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