『御伝鈔』(9)第八段~「定禅夢想」(2)
ところで、本段は、第四段(「蓮位夢想」)と同じく、後に追加増補された段である。それでも、晩年の七四歳で追加された第四段に比べると、早い段階で追加されているのが分かる。現存するものは以下のとおりだ。
(1)高田専修寺本=十三段(上巻六段・下巻七段)覚如二十六歳
(2)西本願寺本 =十四段(上巻七段・下巻七段)覚如二十六歳
(3)東本願寺本 =十五段(上巻八段・下巻七段)覚如七十四歳
しかも、(聖人誕生からの年代順が破られて追加されるので、流れとしては不自然で、聖人七〇歳の帰京後の出来事である。
第一段=誕生から出家剃髪(九歳)、比叡山での修行。
第二段=吉水入室(二十九歳)。
第三段=六角夢想(三十一歳)。
第四段=八十四歳の最晩年-お弟子の夢想で、親鸞様=阿弥陀様。
第五段=選択付属 法然門下(三十三歳)
第六段=信行両座 法然門下(三十四歳頃か)
第七段=信心一異 法然門下(三十四歳頃か)
第八段=七十歳(帰京後)-部外者の絵師の夢想で、親鸞様=阿弥陀様。
またこれは、「蓮位夢想」でも触れたが、『御伝鈔』では、十五段のうち、上巻「六角夢想」「蓮位夢想」「入西観察(定禅夢想)」が 下巻「箱根霊告」「熊野霊告」の五段が夢告で構成されている。
法然聖人と善導大師との夢中での出会い、親鸞聖人ご自身の夢告の記載、恵信尼公のお手紙(六角夢想・811頁、下妻夢想・812頁、寛喜の懺悔・815頁)にも夢告が、聖人の生涯の転機となる場面で現われている。当時の人々にとって、現実世界での出来事以上の宗教的な深い意味を持っていたである。
つまり、第四段が、お弟子の夢想であったのに対して、第八段は、外部の方の夢想で、それが共に、親鸞様が阿弥陀様の化身であることを示しており、法然門下での出来事、つまり親鸞様と法然様は師弟はまったく一致しており、しかもその後継者は親鸞聖人であって、それは阿弥陀様の生れがわりであることを述べるために追加されたと思われるのである。
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