しんらん交流館の公開講座~ブラジルの日本型交番の話~
連れ合いが芝居の公演をさせてもらったご縁で、連れ合いと一緒にしんらん交流館の公開講座を聞きにいく。「情熱の国、ブラジルに暮らして」というテーマだ。娘たちがブラジルにいることをご存じで、担当の方から、ぜひにとお誘いいただいたのだ。30名ほどの参加だったが、お東のご門首夫妻が一つ前に坐られた。ブラジルが長かったこともご縁があるのだろう。一昨年は、連れ合いの芝居も見に来てくださり、感銘されたということもお聞きした。
https://jodo-shinshu.info/2021/02/25/28155/
ところで今回の講演会。この演題からは正しい内容は伝わってこないが、幅広い皆さんに聞いてもらいたい内容だった。「情熱の国、ブラジルに暮らして」とした方が、やわらかい、とっつきやすいイメージがあったのかもしれないが、内容は、ブラジルに導入された日本の交番制度の指導のために、1年半、ブラジルで活躍された現役の婦警さんのお話。
日本とブラジルの警察や治安に対する考え方の違いから、気質、文化の違い。国連が、世界で最も最悪の治安だといわれたブラジルのサンパウロのファヴェーラ(スラム地域)に、日本の「交番」制度を導入して、画期的に犯罪が減少した取り組みなどが紹介された。これは文化の違いや国の成り立ちの違いもあろが、警察・権力とは、力や武力で犯罪を押さえこむものだという考え方と、住民、地域、行政と協力しながら、武力にたよらない民衆の力で治安を維持しようという戦後の日本式の警察のありようが世界にも高く評価されているということである。
私達は、日本の交番や駐在所、その中での「お巡りさん」しか知らないのだが、世界ではこれが特殊であり、具体的な、身近なやりとりや例話を通して、日本の私達の当たり前が異文化を通して見ると、素晴らしいシテスムで世界に誇る内容であるのが、面白かった。確かに、日本で自動小銃やマシンガンの類を構えている警察官を観ることはなし、街角で銃撃戦が行われることもない。それどころか、ほとんどのお巡りさんは、訓練以外で発砲することがないまま退官するという。一方で、海外では、マフィアや凶悪犯との銃撃戦も珍しくないという。そういえば、中国の新疆ウングル自治区の国境線では、自動小銃をもった警察官に睨まれ、威圧的でとても怖かった。それが犯罪が多かったり、強権的な国では当たり間の姿である。
また地域で防犯や治安対策の取り組み、町内会活動なども、日本独自のものだという。どんなシステムにも善し悪しはあるだろうが、これだけの大国で、大都会でも治安がいい日本社会の基盤がどのように成り立っているのが、世界でも治安が悪い国の一つであるブラジルの取り組みをみれば、それがよく分かってきたのである。
もちろん、単に警察の力や地域の取り組みだけでは改善されない。以前、リオデジャネイロの中でも貧困にあえぐファヴェーラと呼ばれるスラム地域を舞台にした、強盗、麻薬ディーラーなどをして金を稼ぐストリートチルドレンたちの抗争を実話を基にして描く、『シティ・オブ・ゴッド』とブラジル映画を観たことがある。貧困による激しい格差と、付随した教育や就職などの差別による社会不安が、若年層の常態化した犯罪を生むというのが最大の課題ではあるが、そんな中でも、一筋の光明が射しているかのようだった。
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