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『御伝鈔』(6)第五段~『選択集』について

 そこでその『選択本願念仏集』について簡単に窺った。

『選択集』の撰述の経緯であるが、 建久八(一一九七)年、六十五歳の法然聖人は病に悩まされる。前関白、九条兼実公はいたく心配され、回復を待って「浄土の法門については年来承っっているが、まだ心にとどめえない点がある。なにとどこの際、肝要なことについて記述して頂きたい」と懇請。そこで真観房感西、安楽房遵西と善恵房証空(堪文役)の三名を執筆役(三筆四交代)に命じて、翌年春、十六章からなる『選択本願念仏集』が完成する。草稿本は京都の廬山寺蔵。冒頭の(十四文字)のみが法然聖人の真である。

『選択集』の大要は、選択本願(第十八願)に寄って、称名一行を専修と主張し、浄土宗の独立を宣言した、浄土宗の立教開宗の書。冒頭に「南無阿弥陀仏 往生之業 念仏為先」(親鸞聖人伝授本は「念仏為本」)と、念仏往生の宗義を標示し、以下十六章に分けて、称名念仏こそが本願にかなう選択の行業である旨が述べている。(ちなみに「先」=宗要、肝要、かなめの意。「本」=根本最要の意。共に同意とみてもいい)。
 各章ともに、標章の文・引文・私釈の順で構成。標章の文は主題を簡潔に示し、引文ではそれを証明する「浄土三部経」や解釈の文(大半が善導大師)を引き、最後に、私釈(「わたくしにいはく」)で、法然聖人の解義が明示される。 特に、第一の二門章、第二の二行章、第三の本願章の三章に要義が説かれる。また、この三章の意をまとめたものが、本書の結論ともいうべき「三選の文」(これも窺ったが略す)。

 またレジュメでは、十六章の〈標章の文〉と、略称、そして『浄土三部経』の引用(ただし、第一章『安楽集』、第二章『観経疏、』第九章は『往生礼讃』)以外)などを列記したが、ここでは煩雑になるので省力する。

 ところで、この書の書写を許されたものは、極めて少ない。『選擇集』の結びは、本書を一度御覧になった後は、「壁の底に埋みて、窓の前に遺すことなかれ」とし、これを非難する(破法)の人が、悪道に落さないためだと言われた。法然門下には、約二百名ほどの直弟子(『七ケ条起請文』に記載)があったが、本書の相伝弟子はきわめて少ない(後序にも「この見写を獲るの徒、はなはだもつて難し」とある)。はっきり分かっているのは以下の10名程度か。
 長楽寺隆寛律師(多念義)・幸西大徳(一念義)・小阪證空大徳(西山義)・鎮西聖光大徳(鎮西義)・九品寺長西大徳・信空大徳(一番弟子、弟弟子)親鸞聖人。おそらく源智(晩年まで長年随従)と、執筆の感西、遵西。

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