『御伝鈔』(5)第四段~「蓮位夢想」(3)蓮位房は凄い!
ところで、この段の主役である、釋蓮位(?~1278)とはどんな方であったか。
常陸(現茨城県)下妻の人ともいわれているが、「親鸞聖人門侶交名牒」には、「洛中居住弟子」(京都在住の門弟)の八名の中の一人。聖人の晩年に常随された方で、聖人と関東の門弟との往復書簡などの取次も務めている(『御消息集』767頁など)。 また『教行信証』坂東本の表紙(証巻、真仏土巻)左下部には、聖人の直筆で、「釋蓮位」との袖書が残るなど、聖人の晩年にもっとも信頼されていた門弟であったことは間違いでない。
覚如上人の『口伝鈔』でも、第六章(880頁)と第十三章(895頁)にも記されており、十三章は第四段と同一エピソードがある。その『口伝鈔』では源頼政(源三位入道1104~1180))の孫とあり、一説では俗名を「兵庫頭宗重」といわれた。また後世、本願寺が門跡寺院となったおりに、坊官(門跡家の家司、いわば執事。妻帯し、僧衣を着し帯刀する)を、明治初年まで務めた下間家の祖とも言われるほど重要な門弟のお一人なのである。
講義では、『御消息集』に収めれている蓮位房の添書を現代語訳で拝読させて頂いたが、ご自分ではなかなか私的なことを語られない親鸞聖人が、門弟のご往生に関して、涙を流されていたなどというお人柄が伝わるお手紙で、有り難かった。
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