『御伝鈔』(5)第四段~「蓮位夢想」(1)~
第四段「蓮位夢想」の大意は、建長八年(聖人八十四歳・一二五六年。後に康元元年と改元)の時、常随の門弟・蓮位房が、聖徳太子が親鸞聖人を礼拝し、文を告げられる夢告を感得される。それで覚如上人は、親鸞聖人が阿弥陀如来の化身であることは明らかだと述べられている。
覚如上人の晩年(七十四歳のとき。二十六歳で著述から四十八年も経過)に追加増補されていた段であり、十五段中もっとも短文(百文字程度)。覚如上人六十二歳の報恩講のご法語をまとめられた『口伝鈔』第十三章「蓮位夢想」が、同内容で先行することから、覚如上人は晩年にこのエピソードを知られたと考えられている。
『御伝鈔』は、第一段で誕生から出家剃髪(九歳)、比叡山での修行、第二段で吉水入室(二十九歳)、第三段で六角夢想(三十一歳)、第五段以下は、法然門下での出来事(三十二歳~三十四歳)と続く中で、第四段では八十四歳の最晩年のエピソードが追加挿入されている。これは、第三段「六角夢想」が、聖徳太子は観音菩薩の化身(法然聖人は勢至菩薩の化身)であり、その観音菩薩(聖徳太子)から東方の群衆に教化を託される聖人の夢告であったことに関連であろう。東方の群衆への弥陀の本願を教化を遂げられたことに対して、今度は聖徳太子(観音菩薩)が、親鸞聖人を阿弥陀如来の化身だと礼拝される門弟の夢告を連続掲載して、観音菩薩(聖徳太子)を拝んまられた親鸞聖人であってが、実は阿弥陀様の化身であることを示す役割があったと考えられている。(続く)
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