『御伝鈔』(5)第四段~「蓮位夢想」(4)~聖人84歳の起こったこと
最後にこの八十四歳前後の出来事を、テキスト(P72)を参照しながら頂いた。
蓮位房の建長八年(康永元年に改元・聖人八十四歳)の二月九日の寅の時の夢告
同年五月二十九日に、聖人は長男善鸞房を義絶。性信房に書状を送る。
同年『如来二種回向文』、翌年『一念多念証文』『聖徳太子奉讃』(百十四首)
八十六歳で『正像末和讃』の完成と、精力的に著述を現わされる。『正像末和讃』の冒頭「夢告讃」には、
「康元二歳丁巳二月九日夜、寅時、夢に告げてくわく」。
弥陀の本願信ずべし 本願信ずる人はみな
摂取不捨の利益にして 無上覚をばさとるなり
蓮位房の夢からまる1年後、時間も日時も同じ、二月九日の寅(十日の暁)の夢告から始まるのである。
八十四歳には、ご長男を義絶という晩年の悲劇、大事件がおこっている。しかし『御伝鈔』ではその点には触れておられず、その3ケ月前の出来事が掲載されている。そこでは、親鸞聖人が阿弥陀如来の化身であるというのであるが、現実に起こっていたのは、凡夫として悲哀であり、また親子の血を絶ってまでも法を護られた苦悩である。しかしこそから精力的な著述か都度は続き、その1年後の聖人の夢告から、悲嘆述懐和讃に代表されるような厳しい自己内省も含めた『正像末和讃』が完成されていくことを合せて頂くと、法の持つ凄まじさを味わい深く頂くことができる。
追加された短い章で、また親鸞聖人の行状には馴染まないイメージがあったが、蓮位房の活躍や、八十四歳頃の聖人の現実を合せて考えてみると、とても深い意味合いがあることに気づかれれて、とうも尊かった。南無阿弥陀仏。
次回、2月7日(日)13時30分~17時
第五段「選択附属」の段。いよいよ法然門下時代のご活躍の様子が続きます。
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