« 『仏敵』第8章 | トップページ | 次号の華光誌は誌上感話 »

ポーランド映画『Cold War~我が歌、二つの心』

 Tジョイ京都で上映中の、昨年の名作の2本目は、ポーランド映画『Cold War~我が歌、二つの心』 3本のなかでぼくに一番フイットした。

  イギリス、フランスとの合作によるポーランド映画。モノクロで描かれているのに、豊かな色彩を想像させる映像美が見事。この年のアカデミー賞の外国語映画賞は逸品揃いで、『存在のない子供たち』『万引き家族』、そしてメキシコ映画『ROMA/ローマ』などとオスカーを争った。結局、受賞したのは『ROMA/ローマ』だったが、これもモノクロの見事な映像だった。

 さて、タイトルが示すように東西の緊張が高まる冷戦=cold war時代。第二次世界大戦から4年、共産圏、ソ連支配下の1949年のポーランドから物語が始まる。

 まだ復興途上のポーランドで、田舎の町を廻っては素朴な民謡やフォークソングなどの音楽を蒐集し、優秀な人達を集めて、国家歌舞団がスタート。主人公は、そのディレクターにして、音楽家、ピアニストの男だ。オーデションで出会ったヒロインは、魅力的な歌唱力に、破天荒、かつ複雑な歌手で、どうも虐待を受けていた父親殺しの過去がある。歌舞団は成功するが、国家や共産主義、ソ連を賛美するす音楽や舞踏が強要されるようになる。このあたりは、当時の共産圏の歌舞団ではよくある風景だ。
 
 そして、ベリルン公演を機会に西へ亡命する主人公だが、一緒に亡命する予定の彼女は現われなかった。

 その後、彼はパリでのジャズピアニストとなって活躍するも、パリでの公演をきっかけに再開する二人。でも、冷戦下、社会が複雑であったように、それを反映して、二人の関係も複雑で、一筋縄ではいかない。パリで活躍した彼女だが、再び夫のいるボーランドに戻ってしまう。ついに彼も自由を捨てて、彼女のために投獄覚悟でボーランドに戻り、強制収容所で労役につくのだ。この二人の関係はなかなか複雑で、妙味であることろが、この映画のキモだ。

 モノクロ映像にくわえて、説明を最小限に抑えて、描写に徹したアート系の作りになっているけれど、けっして小難しいわけではない。全編、すばらしい音楽で彩られているからだ。素朴な民謡やフォークソングに、共産圏の音楽、そして60年代パリを象徴するようなジャズに、ロックに乗って踊るシーンなど、リアリティーある音楽はすばらい。何より、タイトル(2つの心)にもなっているヒロインが歌い上げるバラッドが印象的。そして、ニヒリビム溢れるラストに、切ないピアノ・ソロと、もの悲しいアカペラもマッチしていた。

|

« 『仏敵』第8章 | トップページ | 次号の華光誌は誌上感話 »

映画(欧州・ロシア)」カテゴリの記事