聖典講座「観無量寿経」「得益分」(1)
前回で、 定善十三観と、散善三観(三福九品)が説かれた正宗分(本論)が終わり、その利益を得ることを示す「得益分」にはいる。当面は、韋提希夫人が阿弥陀仏や極楽を観見して無生法忍を得て、また五百名の侍女も菩提心を発すると説かれている。
ただ、ここを「得益分」と別開(独立)された善導様のお心は深い。
普通、経典(仏説)は、序論にあたる「序分」、本論にあたる「正宗分」、そして結論にあたる「流通分」に三分科される。従来は、『観経』も三分科されて理解されているが、善導様は、特に『観経』の特色を明かにするために、五分科して解説くださったのである。
一、序分
二、正宗分
、三、得益分
四、流通分
五、耆闍分
善導様以前の聖道の祖師方は、この得益分を正宗分としてとらえ、韋提希夫人たちは、定善、散善の教説をすべて聞き終えた(聞経)ご利益によって、極楽の相や阿弥陀仏を見奉り、無生法忍を得たと理解されてきた。普通に読めばむしろ当然の理解である。
しかし善導様は違った。韋提希夫人はすでに、序分の光台現国(現161頁)で極楽世界を、また第七華座観の直前に(現175頁)阿弥陀仏と二菩薩を拝見しておられる。それは共に定善が完成したからではない。すべて釈迦・弥陀二尊のお力によるものだと言われねばならない。それで、定善、散善の自力の行が説かれた正宗分と別して(別開)、得益分とされている。つまり韋提希夫人は、仏力と願力によって極楽や如来を拝見し、永い生死の闇が晴れて信心決定し、無生法忍のご利益を得られたというである。
ここにも、「善導独明仏正意」である。『観経』の祖師方の古今の誤解を質し、仏様の正意、正しい領解を規定されたのである。まさに古今楷定の明師である。(続く)
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