最後の映画は『ロニートとエスティ』
5年前から続けて学んでいる仏教大学の四条センターは、2月末から休講が続いている。その他の研究会も、3月から休みが続く。
ただ映画館は開いていた。3月になると観客は少なくなり、4月になると目に見えて減った。京都シネマでは、だいたい10名程度、みなみ会館は、5~6名(いつものことか)程度である。逆に、大手のシネコンはさらに閑散としている。とうとう大スクリーンに、ぼく独りという事態がおこる。一度は、独りで映画を観たいと思っていたが、こんな形で実現するとは想定外だ。しかもである。それが連続して起こった。「一人がためなりけり」である。こうなると、居眠りもしないし、エンディング・ロールの最後までキッチリ見せてもらった。
しかし、それも今日までだ。京都の映画館も、明日からすべて休業が決定。急に決まったので、来週に見送った映画が見られなくなった。今週は、焦らずにあまり見なかったのが裏目になった。でも仕方なしだ。
最後は京都シネマで、『ロニートとエスティ』 ~彼女たちの選択~。厳格なユダヤ教のコミュニティーの中で、権威に反発し、自由に生きることを選択して飛び出した女性と、その枠の中で信仰を貫き、自己を殺して幸せになろうと女性が、厳格な指導者であり、父親の死をきっかけに、再び出会っていく物語。主演のWレイチェルが、繊細な心の機微を、または大胆な性愛シーンを激しく好演している。
あいかわらず一神教の教えでの、厳格な父親の存在が意味を持つ。これはキリスト教やユダヤ教などの一神教の文化圏と、日本のような母性的な多神教の慈悲の寛容さ、母性が表立つ文化との違いがまざまざと出る。これは映画を見ていればよくわかる、普遍的なテーマである。日本映画の大半は、厳格な父親不在、寛容な母性がテーマとなることが多い。一方、この映画は厳格な閉鎖集団内でのタブーへの挑戦は、父親への挑戦でもあり、ぼくの心の琴線に触れるテーマでもあった。
願わくば、これが今年最後の映画とはなりませんぬように…。
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