インド仏跡(32)~ジャイナ教の出家者(1)~
素っ裸で、払子(虫を払う箒)を持ち、堂々と歩むジャイナ教裸行派の出家者の姿を見たときは、衝撃的だった。2500年前の教えが、一気に現実となったのだ。しかも3度までも出家者の姿に出会うことになる。
教祖のジナ・マハーヴィーラは、『信巻』にも登場する六師外道の一人「尼乾陀若提子」である。親鸞聖人のご和讃にも、「外道・梵士(バラモン教徒)・尼乾子(ジャイナ教徒)に こころはかはらぬものとして」(『悲歎述懐』618頁)とか、「九十五種世をけがす 唯一仏道きよくます」(『正像末』602頁)の九十五種の外道の一つに数えられている。
そのジナ・マハーヴィーラは、バイシャーリー郊外のクシャトリヤ(王族)の家に生まれで、釈尊よりも17歳若い。父親の名前は「シッダールタ」と、釈尊の若き日の名前と同じである。30歳で出家し、12年の苦行の末、真理を悟って「ジナ=勝利者」となった。ジャイナ教とは、「ジナの教え=勝利者の教え」という意味がある。以後、30年間、王舍城を拠点に伝道に励み、72歳でパータリプトラ近郊で没している。つまり、まったく釈尊と同時代に、同地域で活躍しているのだ。共通点は、
仏教の立場からみれば、六師外道は「外道」と名付けられるように、仏に成れない僞の教えということになる。がしかし、当時のインド宗教界、思想界では、共に最高権威のバラモン教を批判する新興思想であり、新しい自由思想家として共に、ビンビサーラ王やアジャセ王に保護を受けて、同じ地域で活躍していたライバル。バラモン教からみれば、同一視された危険思想ということになろう。
さてその教えは、「(1)正しい信仰、(2)正しい知識、(3)正しい行いという「三宝」を重んじること。
そして、徹底した禁欲の実践である。「五禁戒」-(1)不殺生、(2)不偸盗、(3)不淫、(4)不妄語、(5)無所有を厳守である。仏教の「五戒」に類似するが、仏教では「不邪淫」であるのに対して「不淫」(夫婦での男女関係も禁じられている)。そして、「不飲酒」が「無所有」になっている。つまり、より徹底した禁欲(中でも、不殺生-アヒンサー)と、無所有が強調される。命を捨てる断食や苦行に徹しなければ、迷いの輪廻のから解脱した、真の勝利者になれないというものだ。(つづく)
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