『草間彌生 ∞ infinity』
もしいま、日本人でほんとうの「天才」は問われれば、この人がその最右翼にあるでしょう。世界中で、もっとも高評価と、高値で取引される人気芸術家である。
『草間彌生 ∞ infinity』は、彼女の波乱の半生を描いたドキュメンタリー映画。有り余る才能を持ちながら、日本では古い因習の中で抑圧され、単身渡った自由の国アメリカでも、女性であること、東洋人(日本人)であることで、差別や偏見、低評価を受ける。しかし死に物狂いで作品を造り、不公平と戦い、必死の売り込むの末に、高評価も受ける。しかし、その優秀なアイディアが白人の有名アーティストに盗まれ続けるという苦難も続く。とうとう精神を病み、自殺未遂もおこして、失意のまま日本に帰国。ところが日本では、スキャンダラスな目立ちたがり屋としてバッシックされ、卒業高校からも除名、実家からも勘当同然で、故郷にもどこにも居場所がなくなっている。
しかし、精神を病み、誰からも見捨てられながらも、必死の創作活動は続けらていく。すると、正当に彼女の作品を評価する理解者、支援者が現われてくる。その高評価と、理解的な雰囲気の中で、作品自体も、彼女が本来もっていた温かさ、明るさが全面に押し出されて変化してく様子が、よく分かって面白かった。手法は変わらないのに、こんなにも精神の安定が、作風に現われるのかとびっくりした。これほどの天賦の才が埋もれたままに終わったならば、人類の損失であったかもしれない。
タイトルどおり、無限(infinity、∞)の可能性に脱帽。でも、紙一重のところの差は、凡人に分からなかったけどなー。
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