臨地法座(6・番外篇)将軍塚
参加者からの要望で、希望者のオブションとして、「将軍塚」まで足を伸ばすことにした。
夕陽を前に、逆光がまぶしくて、視界は悪い。
でも目的は、ただ京都市街を眺めることではない。ここが、『仏敵』の冒頭の舞台だからである。
それは日和よい三月下旬の午後であった。私は、東山の将軍塚の上に立って、松林の間から隠見する京洛の風光を眺めていた。
ここから俯瞰する京都市街は、かわいらしい盆栽の街だった……
『仏敵』は、将軍塚から眺めれる京都市街の詳細な描写から始まるのである。そして、
私は塚の周囲にある広場を、ぶらぶら歩きながら、ものを考えた。
この将軍塚の松の大木で、私の学友が首をくくって自殺したのは、ちょうど昨年の今ごろであった……
と相撲部のエースが、柔道帯を松に括りつけての最期であった。
男たちは、「どの松なのかなー」と、あたりを探していた。それらしき一本松はなかったが、「この松がそうです」と、将来「伊藤先生の御旧跡」として、案内板が建つ日がくるかもしれない?
一方、京都マダムたちは「甘い思い出があるんですわ」と、口々にロマンスの思い出を語っておられた。夜景が美しいデートスポットである。
京都マダムの思い出は、かなり昔なのだろうが、伊藤先生がこの地を訪たのはもっと古い。もう100年も前のことだ。まだ東山ドライブウェーはなく(当たり前)、山道を徒歩で登り、早足でくだり降りて、円山公園から知恩院、そして岡崎の地まで足を伸ばしておられる。
恐ろしいほどの健脚ぶりである。
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