7月の聖典講座~深心(1)
前回から、『観経』三心に入った。
釈尊は、散善九品を説く冒頭で、三種の心(至誠心・深心・回向発願心)をあげて、この三種の心を発こせば往生できる説かれた。行や善をなすにしても、どのような心持ちで行うのかを、三心という形で述べらているのである。
しかし、この三種の心がいかなるものかは、『観経』では一切触れておられない。その三心を詳細にご教示くださったのが、善導様である。簡単に述べておくと、
一、至誠心(「至」は最高、真。「誠」は、嘘、ごまかしのない心)、つまり真実心
二、深 心(深く信じる心。深いとは浅薄ではなく、決定的である)つまり決定心
三、回向発願心(「回向」の「回」とはめぐらすこと、「向」はさし向けること。
自らの善根を振り向けること。「発願」とは、浄土往生を願う心を起こすこと。
当面の意味=自らの成した善をふりむけて、浄土への往生したいと願うこと。
他力のお心=阿弥陀様より回向(ふりむけてくださった)された功徳を頂き、必ず浄土往生できることを喜ぶ心、
ということなる。
その中で、今回は「深心」についてである。主に、深心釋に沿いながら、その概観をいただいた。
善導様は、「『深心』といふは、すなはちこれ深く信ずる心なり」(『散善義』)
「『深心』、すなはちこれ真実の信心なり」 (『往生礼讃』)
と示されているとおり、単なる浅い、深いではなく、本願を信じる信心のことを指している。
さて『散善義』の「深心釋」の概要を、『浄土宗辞典』引用しながら、一部加筆して窺っていった。かなり煩雑になるで、ここでは略するので、関心のある方は、通信CDをお聞きください。
だいたい以上を要約すると下記のように図式(ここでは並列にしかかけない)されると思われる。これは、父の恩師でもあって大原性実先生の、『善導教学の研究』を参照にした。
第一=信機
第二=信法 弥陀本願(『無量寿経』説示)
第三= 釈迦勧説(『観無量寿経』説示)
第四= 諸仏證勧(『阿弥陀経』説示)
二~四「信法の相」
第五= 仏教仏意仏願
第六= 観経教旨 五~六「随順信相」
第七= 七 「立信方法」
もちろん、これだけ見ても分かるものではない。「深心釋」を七深信として詳しくお説きくださったのは、親鸞様である。
つまり、親鸞様は、深心釋を「七深信」「六決定」と示してくださった。七深信といっても、あくまでも一者「機の深信」と、二者「法の深信」の二種深信である。以下は、「法の深信」をさらに五つに分解・詳説されたと見られた。ただし、『観経』に穩彰顕密(十九願と十八願)があるように、ここでも真仮が交錯すると捉えられている。聖人、独自の発揮である。ただし、今は、煩雑になるので詳細には触れない。『二巻鈔』(『愚禿鈔』)の文をあげるに留めておく。
「「文の意を案ずるに、深信について七深信あり、六決定あり。七深信とは、
第一の深信は「決定して自身を深信する」と、すなはちこれ自利の信心なり。
第二の深信は「決定して乗彼願力を深信する」と、すなはちこれ利他の信海なり。
第三には「決定して『観経』を深信す」と。
第四には「決定して『弥陀経』を深信す」と。
第五には「唯仏語を信じ決定して行による」と。
第六には「この『経』(観経)によりて深信す」と。
第七には「また深心の深信は決定して自心を建立せよ」となり。」
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