6月の聖典講座~『観経』散善(概説(2))
(2)では、三福九品とは何か。
まず、三福とは、福をもたらす三種の善行(世福・戒福・行福)、いわば善行の総称である。
すでに、序分の「散善顕行縁」(164頁)で、三福を十一行で示されている。
一、世福=世間倫理的な善
(1)孝養父母
(2)奉事師長
(3)慈心不殺(四無量-慈・悲・喜・捨の一番目)
(4)修十善行(一、不殺生、二、不偸盗、三、不邪淫、四、不妄語、五、不両舌 六、不悪口、七、不綺語、八、不貪欲、九、不愼恚、十、不邪見)
二、戒福=戒律を護ること。小乗の善
(1)受持三帰(仏・法・僧の三宝)
(2)具足衆戒(衆戒-もろもろの戒・五戒、八戒、十戒、具足戒
(3)不犯威儀(威儀=規律にかなった立ち居振る舞い)
三、行福=自利利他行の大乗の善
(1)発菩提心
(2)深信因果
(3)読誦大乗
(4)勧進行者(利他行)
九品(くぼん)とは、三福行を実践し浄土往生する人々を、九種類に分類して、詳しく述べている。品は、「ひん」ではなく「ぼん」と読む。人に等級や格差をつけて区分すること。浄土往生する人々を、上品・中品・下品を三分類し、それぞれにまた上生・中生・下生に三つに分けて、合計九種類の等級分けをされたものである。
(3)では、『大経』三輩段との関係とどうか。
『大経』下巻(72~75頁)には、浄土願生の人を、上輩・中輩・下輩に三分類されている。輩とは、「ともがら」「やから」で仲間のこと。
法然様は、三輩と九品は開合の異(詳しく説くのと、合せて説くのの違い)であるといわれた。つまり、開ければ九品、合せれば三輩となる見られている。
「『観経』の九品と『寿経』の三輩と、本これ開合の異なり」(『選択集』・七祖篇1220)(続く)
| 固定リンク
「聖典講座」カテゴリの記事
- 『口伝鈔』第七条「凡夫往生章」(2023.01.29)
- 『口伝鈔』第五条「仏智護念章」(2022.11.13)
- 『口伝鈔』第四条(2022.10.16)
- 聖典講座『口伝鈔』(1)(2022.10.15)
- 『御伝鈔』下巻第七段(3)「~廟堂創立の経緯とその後~(2022.02.22)