外護の善知識(2)
永代経が終わった翌日、高山のFさんからの電話があった。1月の報恩講でも、11月の華光大会の後でも、大きな法座の後には必ずあることだ。でも、法話の質問でも、法座の感想でもない。
撮影くださった法話DVDの編集についての相談である。
Fさんは、今年の九十歳になられた。このために機材を購入くださり、毎回、撮影のために宅配便で送ってきてくださる。それもすべて自費負担してくださっているのだ。Fさんの仕事は早い。機材が自宅に戻ったらすぐに編集に取りかかってくださる。先生方の法話タイトルや組み合わせを尋ねられるのだ。そして、法座終了後、1週間以内に編集原盤にダイビングされたDVDまで送ってきてくださるのである。今回も、5月5日には会館に完成品が届けられていた。
ところが、御礼の電話しようと思ったら、Fさんが倒れて入院されたという一報が入ってきた。
病院は、高山法座の会所への道にあって近かった。お見舞いに窺う。右側は麻痺していて、言葉もほとんど聞くことはできなかった。それでも、意識はしっかりされていて、こちらの言葉に反応くださる。お別れの時には、片手で手を合わせて(合掌したかたっのだろう)お見送りくださった。
Fさんは、このDVD撮影を悟朗先生からいただいた自分の仕事だとライフワークにして取り組んだくださっていた。毎回、足の少し不自由な奥さまの手を引きながら、仲睦ましく参詣くださる姿は、法座の風物詩でもあった。しかし、高齢になられて、京都に来るだけでもお疲れであろうに、如来さまの仕事だと、いのちのある限りやられてもらいますと仰っていた。同時に、最近は、「これが最後です」というのも口癖であった。永代経の終わりも、少しお疲れの様子にも見えて、心配していた。
でも、責任感の強い方で、撮影だけでなく、編集、ダビングを終え、会館に送付された直後に倒れられたというのである。
まさに執念。頭を下げるしかない。もし永代経DVDをお買い求め方は、Fさんの法にかけるお心も聞いていただきたいのだ。
Fさんのこの仕事は終わる。機材を会館に寄付してくださるという。
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