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5月の聖典講座~愚痴の凡夫~

『観経』の序分、中でも発起序は『観経』の性格を示す重要な箇所で、善導様は『観経』が説かれる縁を七節(「発起序七縁」)に分けられた。「王舎城の悲劇」が韋提希夫人の救済を中心に述べられているのだが、今回は、そのうち「厭苦縁」「欣浄縁」と「散善顕行縁」の一部を窺った。いよいよ愚痴の凡夫の代表、韋提希夫人の苦悩を機縁にして、弥陀の本願が、誰をお目当てに建てられたのかが明らかになってくるのである。

 厭苦縁【四】とは、韋提希夫人が、苦しみ、悲しみの穢土を厭(いう)う段である。
 幽閉され、愁憂憔悴(しょううしょうすい)した韋提希夫人が、涙ながらに(悲泣雨涙)仏弟子を遣わすことを遥か耆闍崛山を望んで要請される。そのやるさない思いを知った釋尊は、目連・阿難の二尊者を遣わすだけでなく、自らも「耆闍崛山より没して王宮に出でたもう」のである。韋提希が頭を上げるいなや、神々しい釋尊のお姿をあったのだ。その釋尊のお姿に接した韋提希は、「自ら瓔珞を断ち、身を挙げて地を投げ号泣し」して、愚痴のありったけを述べるのであった。

 続く、欣浄縁【五】は、韋提希夫人が、苦の世界、穢土を厭うた後に、浄土を欣(ねが)う段だ。
 釋尊に愚痴をぶつけた韋提希は、「わがために広く憂悩なき処を説きたまえ、われまさに往生すべし」と述べ、さらに娑婆の厭うべき姿を語り、「清浄の業処」に生まれることを願った。その願いを聞き終えて釋尊は、眉間の白毫より金色の光を放たれ、数限りない諸仏方の浄土を示される(光台現国)。数々の仏国土の中から、韋提希は、阿弥陀様の極楽浄土に生まれることを願われたのである。

 散善顕行縁の前半【六】だけを頂いたが、韋提希の別選により釋尊の説法が始まるのであるが、それに先立って頻婆娑羅王を光明で救う段である。
 韋提希が弥陀の極楽浄土を願われたことで、釋尊は「即便微笑」されて、御口より五色の光を出すと、その光が頻婆娑羅王を照らした。すると、王は、なんの煩いもなく釋尊を拝することができ、自然に阿那含(小乗の在家者の悟りの境地)に至ったのである。

 ここに至って、それまで沈黙され、ただ光明で応じられていた釋尊が口を開いてのご説法が始まるのである。
 しかも、その第一声が「阿弥陀仏、此を去ること遠からず」というものであった。

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