奈良と京都での『地獄・極楽』展
細見美術館の「末法展」のことを書いたら、かなり古いが夏に見た奈良博で源信展と、秋に見た龍谷ミュジーアムでの『地獄絵ワン
ダーランド』展にも触れて起きたくなった。昨年は源信(恵信)僧都の千回忌で、今年は、各地で源信僧都ゆかりの展覧会が開かれていた。そのうち、二つの展覧会を鑑賞したのだ。
夏には、奈良国立博物館で『源信展』~地獄極楽へのいざない~の開催されていた。
これはとても見事なもので、感動した。単なる、地獄極楽の図だけでなく、源信僧都の思想に迫る内容。その著作もたくさん
展示されていたし、その思想の背景にあるもの、また同時代の学僧たちの書籍の展示など、体系的な展示がとてもよくて、久しぶりに興奮というか、感動した展覧会だった。
ただ売店で売っていた地獄Tシャツの購入を迷ったが、やっぱりやめた。
●●●●●●●
秋は、京都の龍谷ミュジーアムで『地獄絵ワンダーランド』展が開催された。
招待券もあり、連れ合いと母と一緒に出かけた。この地獄絵展は、東京でも行われているが、地獄のかなり人気のテーマのようで、平日でも盛況だ。どこかで恐いもの見たさの気持ちがあるのだろう。ただ国立博物館と比較しては申し訳ないが、源信展に比べると、量、質ともにかなり落ちる。国宝や重文などの一級品の展示さ比べると、如何せん二軍(いや三軍か)の試合である。もちろん、国宝の一級品ばかりで世の中は出来ていない。美術品として二流、三流であったとしても、どこか味があっりり、面白かったり、キッ
チュさが愛らしかったりする。庶民に生きた地獄・極楽の世界を味わうという意味では面白かった。
ビデオ上映もあって、女流講談師による地獄めぐりが語られていた。これがなかなか面白い作りで、飽きずに見ることができた。これを最後にどのようにまとめるのかと興味津々でいたら、「地獄も極楽も、いまの心の問題だ」というオチで終わり、監修は龍谷ミュジーアムだとクレジットされた。あれれ、いまの己の心に、地獄、極楽があるのだとなると、下手すれば唯心の浄土になっちゃうよ。要は、地獄なんか心の問題だと言いたいのだとすると、極楽だって同じことになる。せっかくの私を指し示してくださった仏説まことが死んでしまう。
結局、展示の意図も含めて、この企画を浄土真宗系の龍谷大学のミュジーアムで行う明確な意味が感じられなかったのが、もっとも残念なところ。
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 『居酒屋夢子・1961』(2022.11.16)
- 大須演芸場での「釈迦内柩唄」(2022.09.22)
- 「ブッダのお弟子さんたち」展(2022.06.17)
- 「最澄と天台宗のすべて」~伝教大師1200年大遠忌記念~(2022.06.01)
- 国宝、聖林寺十一面観音展(2022.03.14)