真宗とカウンセリングの「出会い」
先月から、「真宗カウンセリング成立」の章に入った。
今回は、真宗とカウンセリングの「出会い」における三つの立場の考察する章である。
まず第一は、「真宗とカウンセリング」との関係を問う立場である。 これには、(a)客観的考察と(b)主体的考察がある。
(a)客観的考察とは、
それぞれの歴史、哲学(人間観)、実践目標、実践方法等の比較を行い、
両者の類似点、共通点、相違点などを明かにして、
両者の交流・統合・協力を道を探ろうとするもの。
(b)主体的考察とは、
真宗とカウンセリングの双方に多少とも体験的理解をもつか、主体的関心をいだく者が、自己の内面において両者がどのように関わっているのかを問う立場。
次に第二は、「真宗的カウンセリング」を想定する立場がある。
この中心は真宗よりカウンセリングだが、カウンセラーの基本的立場は真宗にある。
つまり、「真宗の立場に立つカウンセリング」。もしくは「真宗者によるカウンセリング」といっていい。
ところで、カウンセリングのさまざまな種類は、二つの基準で分類できる。
(a9)クライエントの問題領域、もしくはカウンセラーの活動分野にしたがった分類。
ex「産業カウンセリング」「家族カウンセリング」「学校カウンセリング」など。
(b)カウンセリング(心理療法)をささえる理論の相違による分類。
ex「精神分析療法」「来談者中心カウンセリング」「行動療法」「ゲシュタルト療法」 「交流分析」「ロゴセラピー」など。
当然、「真宗カウンセリング」の独自性は、第一義的に(b)の立場である。
・ここでの「真宗」とは、常識的に理解される特定の宗派(セクト)を指すのではなくて、人間と人間の変革に関する基本的な理論を示す用語である。
⇒クライエントが僧侶や信者であるとか、カウンセリングを特定の布教・伝道活動に限定す るような制約はない。
・カウンセラーが、「真宗」という語で示される人間観や人間変革の原理に究極的基盤をおいてカウンセリングを行うことを指す。
また、この(2)には、A型、B型と、さらにA型からB型に移行するC型の三種類がある。
(2)のA型とは、「真宗者であるカウンセラーと、非真宗者であるクライエント」とのカウンセリング。
(2)のB型とは、「真宗者であるカウンセラーと、真宗者であるクライエント」とのカウンセリングである。
真宗カウンセリングといっても、そのほとんどは、A型であって、外見上は、一般のカウンセリングとはほとんど変わらない。ただ、カウンセラーの対人的態度を支える人間学的基盤に、真宗による自己観や人間観、もしくは自己理解や人間理解があるというところにだけ特色があるというのである。
そこを踏まえて、B型では、「カウンセラー、クライエント共に真宗者」であって、共にみ教えを聞くという関係でのカウンセリングと言える。
この場合、「法」を中心にしているという意味で「真宗」カウンセリングであり、「いま、ここ」の交流関係を重んじるという意味で、真宗「カウンセリング」でというのてある。
そして、その中間に、ごく普通にA型の真宗カウンセリングが進行していくうちに、カウンセラーの醸し出す雰囲気など縁として、クライエント側に聞法に対する関心や要求が起こった時、B型の「真宗カウンセリング」へと移行していくケースが考えられる。
ところで、今月の担当者がカウンセリングを学ぶプロセスで、あるグループでの西光先生の態度に、真宗カウンセリングの真髄をかいま見たという例えに、ぼくは心捉えられた。何でも、複雑な夫婦の関係、問題を話されていたのを聞かれた先生は、ただ傾聴されて、 声にならないような深いため息で応えられたという。そして、「夫婦の問題はほんとうに複雑ですね」と一言つぶやかれただけなのに、その場面が動いたというのである。ただ表面だけの言葉のやりとりではない、深い共感の奥に、カウンセラー自身が、何か(深く弥陀の本願)に支えられているという、そんな真宗カウンセラーと出会いの体験談を、尊く聞かせてもらった。
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