『ユリゴコロ』と『ドリーム』の2本
寺院法座は、日曜と月曜と続くが、月曜日は朝座がなく、2時までフリー。チェックアウト後の待ち時間で、映画館に行く。りんくうタウンにある泉南イオンである。イオンの映画館は、55歳以上は1100円・6本見たら1本無料、さらに駐車場が無料というので、よく利用する。昨年は、ここで『君の名は。』を見た。
今年は、夜と朝に映画を2本効率よく観れた。『ユリゴコロ』と『ドリーム』である。
まずは、日本映画の『ユリゴコロ』は、ダークなサスペンス。ある意味で不思議な映画だった。当初、死にとりつかれて、殺人鬼となっていく主人公の女性の心理に共感しずらくしんどかった。特に「血」がでるシーンは苦手だ。
人との共感する力がなく、「ユリゴゴロ」-どうやら「よりどころ」のことを-もたないまま、冷たく他人の死に出会う時にだけ落ち着ける女性の一生を、まったくそんな母親とは知らずに育てられた息子が、その手記を読むことで、事実に向き合っていくという物語。若き日の両親との出会い、恋人との出会い、母親との再会など、物語の核になる人間関係の偶然の出会い方都合がよすぎるのが難点だが、最後の方は、馴染めずにいた物語にだんだとと入り込んでいく気がした。心に残ったといえばかなり残るし、苦手いえば苦手で、ぼくとしては評価は難しい。
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一方、アメリカ映画『ドリーム』は、50年代後半、NASAに勤務する黒人の女性たちの物語だ。なかなか面白かった。でも、邦題(日本語タイトル)がいけない。「ドリーム」だけでは、まるでアメリカンドリームを想像させ、努力したものが報われていくかのような錯覚をうむ。実際は、二重の差別(黒人であること、そして女性であること)の中で、その地位を向上させるために先駆となる女性の物語だ。単なる努力だけでは如何ともしがたい差別との戦いの一コマを、宇宙開発やコンピューターという新分野での成功と重ねて描かれている。ほんとうのタイトルは、「Hidden Figures」(隠れされた人たち)というのだ。
また、日本人には理解しがたい、時代背景の理解があると、より愉しめる。ソ連との冷戦時代、宇宙開発(軍需開発そのもの)競争が激化。ソ連に先を越される「スプートニク・ショック」で、水をあけられたアメリカは焦っていた。宇宙開発では、ソ連がリードしてきたということがある。もうひとつが、この時代は、南部では黒人差別が公然とおこなれわていたこと。バスの座席も、トイレも、職場のボットにも、白人は、有色人種を差別してきた。NASAは、南部のテキサス州ヒューストンにあるのだ。そして、黒人社会においても、女性のエリートは男性によって差別されていた。つまり、黒人であること、女性であること。この二重差別によって、どんな能力があろうとも、職業や結婚など社会の中で虐げられていく存在であるということだ。
上司にあたる白人女性が、部下の-能力があり、管理職の仕事をさせられながらも、ヒラにとどまる-黒人女性に、「私は差別主義者ではない」といい訳シーンがあるが、そこにも差別の実態が垣間見えてくる。ほかにも、今日のネット社会の先駆けとなるIBMの導入など、今日にもつながる社会の予感が窺える。
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