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『阿弥陀経』(8)~諸仏の証誠・護念(2)~

▼ところで、親鸞様は、諸仏のお働きについて、四つの観点から味わわれている。
*親鸞様=「『小経』に、勧信、証成、護念、讃嘆、難易あり」(『愚禿鈔』大意)
 といわれるうち、((1)勧信、(2)証誠(成)、(3)護念、(4)讃嘆が六方段のおこころと窺える。その一つ一つを見ていこう。
 
(1)勧信                                   
「なんぢら衆生、まさにこの『不可思議の功徳を称讃したまふ一切諸仏に護念せらるる経』を信ずべし。」

▼「この経」とは阿弥陀経。その要は、念仏往生の道を勧められるのだから、当然、諸仏方も口を揃えて、念仏往生を勧めれている。またそれは、阿弥陀様の誓願、第十七願の働きによるものである。以下、四つの観点からの諸仏の働きは、すべて第十七願の働きであるので、阿弥陀仏の願いに応じ、釋尊も含めた全宇宙の諸仏方は呼応し、一つになって働いておられるのだ。

*「恒沙塵数の如来は 万行の少善きらひつつ
 名号不思議の信心を ひとしくひとへにすすめしむ」(弥陀経讃・八三首)
*「五濁悪時悪世界 濁悪邪見の衆生には
 弥陀の名号あたへてぞ 恒沙の諸仏すすめたる」(弥陀経讃・八六首)
*「諸仏称名の願(第十七願)と申し、諸仏咨嗟の願(同)と申し候ふなるは、十方衆生をすすめんためときこえたり。また十方衆生の疑心をとどめん料ときこえて候ふ。『弥陀経』の十方諸仏の証誠のやうにてきこえたり。」(『御消息集』十九通・七七六)

(2)証誠(証成)
「かくのごときらの恒河沙数の諸仏ましまして、おのおのその国おいて、広長の舌相を出し、あまねく三千大千世界に覆ひて、誠実の言を説きたまはく」

▼仏の三十二相(大舌相)からも窺える。
 小事の証明=舌を舒(の)べて、面を覆うか、髪際にいたる。
大事の証明=舌を舒べて、大千を覆う。

*善導様=「もしこの証によりて生ずることを得ずは、六方諸仏の舒舌、一たび口より出でて以後、つひに口に還り入らずして、自然に壊爛せん。」(『観念法門』)
*庄松同行=「諸仏さんの舌は落ちて居らぬ」のエピソード

(3)護念
 「一切諸仏に護念せらるる経」・一切諸仏所護念経
 
▼諸仏方の護念もまた、十七願(悲願)の顕れであることが窺える。

*「この世にて真実信心の人をまもらせたまへばこそ、『阿弥陀経』には、「十方恒沙の諸仏護念す」(意)とは申すことにて候へ。安楽浄土へ往生してのちは、まもりたまふと申すことにては候はず。娑婆世界に居たるほど護念すとは申すことなり。信心まことなる人のこころを、十方恒沙の如来のほめたまへば、仏とひとしとは申すことなり。」(『御消息集』二十通・七七八)
*「十方恒沙の諸仏は 極難信ののりをとき
 五濁悪世のためにとて 証誠護念せしめたり」(弥陀経讃・八四首)
*「諸仏の護念証誠は 悲願成就のゆゑなれば
 金剛心をえんひとは 弥陀の大恩報ずべし」 (弥陀経讃・八五首)

(4)讃嘆
 「不可思議の功徳を称讃したまふ」・称讃不可思議功徳 

▼諸仏の勧信、証成、護念はすべて、第十七願-すわなち「十方無量の諸仏が、ことごとく咨嗟(ししゃ・讃嘆のこと)して、阿弥陀如来の名号を称えさせよう」という悲願の顕れである。四番目に讃嘆を示された。
◎六方段には、第十七願の諸仏称名(諸仏咨嗟)の願の成就が明示されている。

*「たとひわれ仏を得たらんに、十方世界の無量の諸仏、ことごとく咨嗟して、わが名を称せずは、正覚を取らじ。(第十七願文・『無量寿経』十八)      
*「十方恒沙の諸仏如来は、みなともに無量寿仏の威神功徳の不可思議なるを讃歎したまふ。(第十七願成就文・『無量寿経』四一)

 最後に、◎諸仏の証誠の理由について、『三帖和讃講讃』から窺っておこう。
一、求道者の疑いを捨てさせるため。    (前出・84首)
二、悲願(第十七願)成就を明確にするため。(前出・85首)
三、聖道の難証を示すため。
 「十方無量の諸仏の  証誠護念のみことにて
  自力の大菩提心のに かなはぬほどはしりぬべし」(正像末和讃281首)
四、浄土の難信により、易行を示すため。
 「真実信心うることは 末法濁世にまれなりと
  恒沙の諸仏の証誠に えがたきほどをあらはせり」(正像末和讃282首)

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