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『阿弥陀経』(5)~依報(浄土の荘厳)(1)

 『阿弥陀経』は、本文である正宗分の(1)弥陀・浄土の讃嘆に入った。前回は略讃、今回は広讃である。また広讃は依報(浄土の荘厳)と、正報(阿弥陀仏の荘厳)に分かれるが、まず極楽の依報荘厳(仏国土の飾り)が詳細に説かれる段である。これを五段に分かっていただいた。【三】

一、極楽の名義(何故、極楽と名付けられるのか)。以下、国土の荘厳が詳説。
二、宝樹を中心にした地上の荘厳
三、宝池の荘厳
四、天楽妙華の荘厳
五、化鳥説法と微風妙音の功徳、の五分類できる。
前回で一、まずを終えたので、今回は二、からで国土の荘厳が詳説されるところである。それを概略すると、

二、宝樹を中心にした地上の荘厳
 金・銀・瑠璃・水晶の四宝で飾られた七重の欄楯(玉垣)、七重の羅網(網飾り)、七重の行樹(並木)で、国中があまねく荘厳される(無量寿経にはない表現)。 そえ故に、その国を極楽と名付けられる。

三、宝池の荘厳
 七宝(金・銀・瑠璃・水晶・白珊瑚・赤真珠・瑪瑙)の池があり、八功徳水で満ちている。池底は金砂が敷かれ、四方の階段は四宝で出来ている。楼閣も七宝で飾られる。池の中には、青・黄・赤・白の車輪ほどの蓮華が咲き、清らかな香りを放つ。
  ちなみに、「八功徳水」とは、(1)澄浄・(2)清冷・(3)甘美・(4)軽軟・(5)潤沢・(6)安和・(7)除疾患・(8)身体増益の勝れた効能であるが、これは、異本である『称讃浄土経』には詳しくあげられている。

ところで、この段には、池の中には、「青色青光、黄色黄光、赤色赤光・白色白光」の色とりどりに、それぞれの光を放つ大きな蓮華が咲くと説かれるい。まさに、個々の持つ個性美と、同時に一味平等の境地を著されていると味わえる。
ところが『称讃浄土経』には「青形には、青顕・青光・青影、黄形には、黄顕・黄光・黄影、赤形には、赤顕・赤光・赤影、白形には、白顕・白光・白影」と訳されている。つまり、羅什訳には欠けているが、光だけでなく、影の存在も著されているのだ。
 さらに梵本では、青、黄、赤・白に続いて、「さまざまな色の蓮華は、さまざまな色・さまざまな輝き・さまざまな陰影を帯び…」が加わるのだ。もし漢文にするならば、「雑色・雑光・雑影」となろのだろう。

 つまりである。極楽は、はっきりした色だけでなく、影や雑といった部分までを、個性美とし、それがまた一味であることが強調されていることになる。これは、仏教カウンセリングで何度かご指導頂いた故大須賀発蔵先生からお聞きしたことでがある。(参照『いのち分けあいしもの』)

  長くなったので次ぎに続く。

 

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