現生十種の益
伝道研究会も「得益篇」にはいり、「現生十種の益について」だ。
親鸞聖人は、『信巻』で、
金剛の真心を獲得すれば、横に五趣八難の道を超え、かならず現生に十種の益を獲。なにものか十とする。一つには冥衆護持の益、二つには至徳具足の益、三つには転悪成善の益、四つには諸仏護念の益、五つには諸仏称讃の益、六つには心光常護の益、七つには心多歓喜の益、八つには知恩報徳の益、九つには常行大悲の益、十には正定聚に入る益なり。
といわれた。浄土真宗では、人間の欲望を満足させる一般の現世利益を否定するので、現世利益和讃やこの現生十種の益にしても、どうも軽く見がちである。この文にしても、「横に五趣八難の道を超え」という横超で迷いの根切れがされたところもすごいのだが、その後に「必ず」と言い切っておられる。もちろん、他力信心の法悦の内的光景を述べられたもので、一般の攘災招福的な信仰や物質的な利益や単なる道徳的な規律を超えたものであることはいうまでもないが、もっと身近なところで、わが身に味わっていっていいのではないだろうか。
また、前の九つのご利益は、すべて十「入正定聚の益」に具せられた法悦的光景である。なぜなら、人生の究極の目的である仏果を得ることが、信の一念の端的に定まり、入正定聚の益を得ることは、無量の計り知れない宗教的価値の実現が包含されているからである。だから、「また現生無量の徳を獲」(念仏正信偈)と述べられているのである。それをあえて、十種と示されているのにすぎないのではある。
現生十種の益のその構造を示すと
(能護)ーー 一、冥衆護持の益-因人
(所護)体ー 二、至徳具足の益-具徳(法徳)
用ー 三、転悪成善の益
(能護) 末ー 四、諸仏護念の益
五、諸仏称讃の益ー果人
本ー 六、心光常護の益
(所護) 七、心多歓喜の益
八、知恩報徳の益ー相発
九、常行大悲の益
≪総≫ 十、入正定聚の益
七、「心多歓喜の益」(心に歓喜、喜び多い)、八、「知恩報徳の益」(ご恩徳を知り、そのお徳に報いる)、九、「常行大悲の益」(常に大悲を行じる)の三つは、機相(つまり私の上に)発現れるご利益だとはいわれる。御利益ということは、喜ばせていただくことも、ご恩報謝させていただけることも、常行大悲も、すべていただきものだということだ。
勿体ないことです。
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