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『浄土法門源流章』を読む

  浄土宗教学院の提携講座を受講する。
 昨年は、法然聖人の『漢語燈録』に収録されている『類聚浄土五祖伝』で、3番目の善導法師、4番目の懐感禅師、そして5番目の少康法師まで読み終えた。

 今年は何が始まるのかと思っていたら、『浄土法門源流章』だという。

 まったく予想していなかった。浄土真宗では聞き慣れないお聖教だ。しかし『浄土宗全書』には収録されている。それにしても一般の講座向けとしては、かなりマニアックな選択だ。もっとも著者は、高名な凝念大徳である。ぼくもこのブログで、いま『八宗綱要』を読んでいると書いたことがある。『八宗綱要』がすごいのは、もう七百年前の著述であるにもかかわらず、いまでも仏教各派の入門書として読み継がれていることだ。手元にある講談社学術文庫のサブタイルは、「仏教を真によく知るための本」と書かれている。しかもそれがわずか29歳の時の著述というのだから、驚きである。まさに八宗兼学の天才であったのだ。

 凝念大徳は、『八宗綱要』の著述を皮切りに、実に百二十五部、千二百巻にも及び著作があるというのである。しかもそれは、華厳、律、真言、聖徳太子の三経義疏に、浄土の教えと多岐に渡っている。もちろん仏教通史ともいうべき概説論なども顕しておられるのである。

 その彼の最晩年、七十二歳で顕したのが『浄土法門源流章』である。彼は二十二歳の時、法然門下の覚明房長西より善導大師の『観経疏』を学んでいるのだ。大徳は鎌倉中期、法然聖人没約30年に生まれ、親鸞聖人とは同じ時代を生きておられる。といっても、聖人が亡くなった前後に浄土教を学んでおられることになる。

 彼は東大寺戒壇院の中興第二世として活躍される。律宗には、法然教団を批判された解脱房貞慶上人(興福寺)や、やはり華厳や律宗で活躍され、猛烈に法然さまを批判された明恵上人などが、一世代前の先輩におられる。解脱上人も明恵上人も、南都仏教を復興され、特に戒律復興を遂げられた方々である。その後継者の立場におられる方が、法然門下に弟子入れされ念仏の教えを学び、その歴史や教義をしっかりとまとめておられるのだ。だからますます、当時の日本の浄土教の立場、法然門下の情勢を伝える書としても貴重なものだといえよう。

 今日は、最初の浄土三部経を原文で購読したが、ものすごく久しぶりに「勉強しました」という充実感を味わった。学生時代よりも、ずっと(100倍以上)面白いです。

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