温かい一言
華光同人のお孫さんに当たる方の三十三回忌法要。
散る桜 残る桜も 散る桜
享年十四歳。あまりにも早すぎる突然の死だった。春休み、明日から学校という夕方、学習塾へ「行ってきます」と言葉が最後となる。目撃者のない交通事故だった。
とにかくまだ学生だったぼくにとっても、印象深いことがたくさんある。当時、七日七日のお参りの間、学習机の上は彼女が出かけたままで、時間が止まっていた。元気な声で「ただいま」と帰ってこられるかのようだった。
それから33年もの月日は流れた。学生だったぼくも、すっかり中年だ。父も亡くなっている。
ご姉妹も、ぼくと同じ世代になっておられた。それぞれの業縁とはいえ、人生はほんとうに厳しい。
お姉さまが、そのとき覚えていることのひとつが、父の言葉だと教えてもらった。
火葬場でのことである。逆縁なので、両親は焼場にはいかれなかった。そのふたりの姉妹に、父が、「『かわいい妹さんのまま覚えておいてあげて』と、骨を拾わさずに帰してくださったというのである。その言葉のやさしい響きが、胸に迫る。三十三年前のことが、たった一言で、今のことのように、そこにいる人達の涙となった。
ぼくにとっても、父の発した意外な言葉だった。それでも、三十三年たっても、その暖かい言葉が、人の心に残っていることに感銘させられた。
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