インド映画『PK』
『PK』といっても、サッカーではない。
インド映画は、最近では、日本でも当たり前に上映されるようになって、もう見るのはいいかな?と考えるようになったけれど、これは違った。
とても面白かった。前作は、日本でもスマッシュヒットした『きっと、うまくいく』。これもよかったが、それ以上に面白い。
ちょっとネタバレになるが、冒頭から奇想天外で、おやと思った。宇宙船がインドに不時着し、宇宙船のリモコンを奪われた宇宙人が苦心惨憺して、そのリモコンを取り返すというストーリー。それだけ聞くと荒唐無稽のご都合主義の映画のように思えるが、コメディータッチでありながら、ラブストーリーであり、人の心も機微も十分に描かれている。まったく信じられない荒唐無稽の話が、事実になってくるくだりも見事だ。
でも、一番の主題は、宗教問題を強烈に風刺している点にある。しかも宗教大国のインドでの話だから、驚く。日本でも友人間での宗教の話題はタブー視されるが、インドは、激しい宗派対立で武力衝突も起こっているのである。ただ宗教そのものではなく、そこに関わる宗教家(教祖)のまやかしを批判するものではあるが、ある種、信仰への皮肉とも取れるシーンもあるのだ。
結局、神さまの声は、人々を苦しめたり、過酷な要求や、荒行を強いるものではなく、弱者に寄り添う慈悲のあらわれだ。しかしながら、その神の声を伝えているという教祖や宗教家が、混線した誤ったメッセージを発し、人々の弱みに付け込み、支配し、時に脅迫して、金品も、精神も巻き上げていくというのである。
「PK」とは、ヒィンドウーの俗語で、「酔っぱらい」だ。お人好しのアホという意味もあるのだろう。
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