『ミスター・ダイナマイト』~ファンクの帝王ジェームス・ブラウン
芸術家を材料にした映画は多い。たとえば、有名な画家や写真家の生涯だったり、小説家や哲学者をとりあげたりもよくされる。そんな中でも、一番、映画との親和性、相性がいいのは、断然、音楽家である。音楽家といっても、有名無名を問わず、ジャンルも、クラシックから、ボップス、ロック、ジャズと実にさまざまだ。演奏家もあれば、作曲家もいる、ミュージシャンやパフォーマー、ロッカーといったほうが相応しい人もいる。いまだ現役もあれば、すでにレジェッドとなった人やまったく無名な人もいる。人物というより、音楽を中心にした映画にいたっては数多い。
映画を見たあとで、その音楽に触れたくなって、CDが欲しくなるのも音楽映画の面白いところだ。普段、聞かないジャンルだったり、知らないミュージシャンに出会ったりできるのも、楽しみだ。
というわけで、ここ数カ月、音楽映画を結構見てきた。というわけで、そのいくつかに触れていこう。
まずは、ミック・ジャガーがプロディスしている、ジェームス・ブラウンの映画が2本。
昨年観た、『ジェームス・ブラウン』~最高の魂(ソウル)を持つ男~は、彼の生涯を描いた伝記風のドラマだ。全盛期が終わり、人気にも才能にも陰りができて、奇行に走ったり犯罪を犯したりするシーンにも、かなり時間を割いている。
一方、落ち目の終盤を大幅にカットして、勢いのある部分を中心に見せているのが、ドキュメンタリー映画の『ミスター・ダイナマイト』~ファンクの帝王ジェームス・ブラウン~だ。だから、文句なくてかっこいい。音楽も、ダンスも、パフォーマンスが、すべてエキサイティング。画面を観ているだけで、こちらも気持ちよくなるから不思議だった。
もちろん、独断的で、わがままで、強欲で、黒人運動に関わっても限界を乗り越えられない、欠点の多数ある人物としても描かれているが、善悪二つを呑み込んだところが、彼の光る個性なのであろう。つまりは、強烈なハイになる薬でもあるが、とんでもない毒も含んでいるということ。
ちなみに、ミック・ジャガーが、同じ番組に出演した時、ジェームス・ブラウンの強烈なジェームス・ブラウンのパフォーマンスに圧倒されて、ビビったといわれているのだが、しっかり、「そんなことはないぞー」と自ら否定するシーンが、どこか子供じみて面白かった。
いずれにせよ、ミック・ジャガーが嫉妬するほど、ジェームス・ブラウンが、かっこいいということ。
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