10月の聖典講座~仏智うたがふつみふかし(1)~
10月の聖典講座は、智慧段(胎化段)といわれる一段の2回目。釈尊の勧誡もこれで終わり、同時に、正宗分(本文)も終了する。
「釈尊の勧誡」(お釈迦様のお勧めと誡めの説教)は、主聴衆が、阿難尊者から弥勒菩薩に変わり、場面が急転化する。そこを大きく二分科すると、前半は「大悲摂化」段(「三毒・五悪段」とも言われる)で、釈尊が大悲のお心から、仏眼に映る痛ましい人間生活の現実を説かれた段であった。次いでその後半にあたる「現土証誠」段に入っている。ここは、「開顕智慧」(智慧)段とか「胎化得失」(胎化)段とも言われているが、大悲(慈悲)のお心で説法された釈尊が、続いて阿弥陀如来の「智慧」について説法に入られるとみると、慈悲と智慧の展開が面白い。ここを概観すれば、光明無量の阿弥陀如来とその浄土を目の当たりに拝まされ、その浄土の中に、化生と胎生の者があることを示し、阿弥陀如来の疑う罪を誡め、如来の智慧を信じる(他力の信)ことを強く勧められているのてある。そして、「正宗分」(いわば本論)のご説法も、ここで終わるのである。
親鸞聖人はこの一段を重要視されていることはいうまでもない。普通なら、前半の「大悲摂化」段(つまり「三毒・五悪段」)は分かりやすく身近で人気がある。しかし、聖人は、五悪段は直接引用はされてない。一方で、皆さんにはピンとこない、この智慧段(胎化段)を、『化身土巻』の要門釈、真門釈、さらに『浄土三経往生文類』では二十願成就文として引用し、『誡疑讃』では、この文言から23首も作っておられる。それは、真宗教義の根底にある「信」と「疑」の「真仮廃立」を明かにする最重要の内容であるからだ。
各段の概要に触れておこう。(続く)
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