『いしぶみ』
平和公園にいった目的の一つは、本川沿いに建つ「いしぶみ」にお参りしたかったからである。
先日、『いしぶみ』という映画をみた。是枝裕和監督の作品で、女優の綾瀬はるかが主演して、演劇的なセットの中で、「いしぶみ」を朗読するのがメーンで、その合間に、登場人物の家族や遺族を、池上彰が訪問してインタビューするというシンプルな構成だ。
空襲に備えた建物疎開で、空き地を後片付けの作業のために、集合していた、広島二中の321名の生徒と4名の教師たちの頭上で、原子爆弾が炸裂する。即死者や
不明者も多数いるが、重体の体で自力で自宅戻ったり、子供を探す父母たちと再会した者たちの最期の姿が、それまで日記や遺族の証言などでに克明に描いている。
72年たってなお、戦争や原爆の悲惨さと、親子(家族)の絆の深さが、リアルに伝わってきて、何度か目頭を押さえた。平和記念館に展示されていた原爆でボロボロになっている「制服」の、その持ち主であった中学生の弟(の遺体)を発見するまでのことを、その遺族(兄さん)が語っているシーンと、その実際の制服を前に胸が痛んだ。
10万人以上の名もなき犠牲があるのではない。その一人一人に名があり、それまでの人生があり、そして家族があったことを改めて教えられた。
映画は、リメーク放送である。もともとは、女優の杉村春子が朗読して、1969年に広島テレビで放送され、それが、翌年、ポプラ社から出版されている。それらを参考にしながら、今回、新たに映像化されたのである。
いまだに、ぼくの本棚にも「いしぶみ」がある。発刊当時のものだ。小学校の高学年だったぼくに、I先生がくださったもので、いまでも大事にしている。
映画をきっかけに何十年ぶりかに読み直した。子供の時とは違って、いまは完全に親の目線で読むことになって涙を禁じえない。
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