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仏教入門講座「大乗経典の不思議な世界」

 「仏教入門講座」~「大乗経典の不思議な世界」と題した12回シリーズの第1回目。その内容である。

 大乗経典は、伝統的な初期原始経典の体裁は踏襲しているが、理論と理性によって(つまり言葉で説明できない、論理的整合性をもたないものは否定する。理論立てて話せば伝わる)すべてが解決れた原始仏教からは、大きく踏み越えていく。理論から、理論を超えた世界への側面が強く、いわば「思議」から「不思議」へと展開していく。それで、「この経を疑うな」「疑うものはもっとも深い罪を受ける」という表現が多くなってくるという。当然、考える(思惟)より、祈りや礼拝の側面が強くなってきたというのである。では、大乗仏教とは何か、それをさまざまな大乗経典を通してその正体に迫るというものである。

 仏教経典についてや、インドの仏教教団の歴史、また大乗経典の代表的な内容などの話があった。
 中でも、大乗仏教の起原説についての話が、興味があった。
 日本では、この世界の権威である東京大学の平川彰説か有力であった。平川によると、
1)伝統的教団(大衆部)からの発展
2)仏伝文学の影響
3)仏塔信仰の興隆
という3点を上げている。ぼくが、大学で学んだころは、このような話を聞いてきた。特に、3)の仏塔信仰説は、大乗仏教を専らとして、出家者である僧侶が妻帯しているわが国の仏教界では、在家者中心の仏塔集団起原説は都合がよかった。

 しかしながら、今日では、この平川説はほぼ否定されている。その口火を切ったのは、北米や南半球から現れてきた。なかでもグレゴリー・ショペンの業績は大きかったという。

 ということなら、書籍を読んでもわかる。実は、今年になってから春秋社からでているシリーズ大乗仏教を、少しずつ読んでいるが、最新の大乗仏教の研究が集められているからだ。でも、なまの講義を聞いて面白いのは、けっして書物にはならない刺激的なつぶやきである。

「平川先生は私達の学会のボスでしたからね。当時の学会ではだれも逆らえませんよね」
「結局、いま日本でも平川説が否定されているけれど、グレゴリー・ショペンの亜流です」
「もし、いまだに仏塔集団起原説としている書物があるのなら、その先生は勉強不足です」などなど。

 で、結局、今日の大乗仏教の起源は確定したものはない。3世紀ころまで、インドでは大乗経典はあったが、大乗仏教はなかったともいわれる。
 その大乗経典を創作したのは、在家信者ではなく、伝道教団の教義に精通した出家者であったといのうが、現在の研究者たちの唯一の共通認識だというのである。

 面白かったです。

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