『沖縄 うりずんの雨』
最近、簡単に正解が出ず、葛藤さられるような秀逸なドキュメンター映画を続きて観る。テーマは、沖縄であり、天皇であり、ヤクザであり、クジラであり、認知症であり、そして世界経済とさまざまではあるが、ぼくたちが住むこの世は、白黒はっきりした単純ものではなく、各人のエゴがぶつかり合う、複雑で、矛盾だらけな多様な世界であるということが、よくわかる。ボチボチでも、少し映画の紹介をしていきたい。
まずは、『沖縄 うりずんの雨』。
沖縄で若い女性が米軍関係者に殺害されるという痛ましい事件が起った。日本政府の抗議と、米軍の謝罪、そして再発防止に勤めるコメントなど、「またか」という既視感を覚えずにはおれない。なぜ、沖縄で、このような暴行や殺害の凶悪事件があとを絶たないのか。その根本を知るには、この映画を観れば教えられることばかりである。
米国人監督が撮った『沖縄 うりずんの雨』は、四部構成となっている。
第一部は「沖縄戦」。1945年4月1日から、12週間にも及ぶ沖縄地上戦で、沖縄の住民の4人に一人が犠牲となる戦場を、実際の米軍によるなまなましい記録映像に、元米兵、元日本兵、そして住民の立場の声を紡いで、その悲劇の実体に迫っていく。しかしこれは、戦争中のことではない。第一部が2004年に起きた沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事件から始まるのが、興味深い。国際法を無視し、つまりは、いまだに日本(沖縄)がアメリカの属国である事実が浮き彫りになる。
そして、第二部は「占領」は、上陸直後から始まる米軍(米国)による差別的な沖縄占領政策の実態と、密集する米軍基地の問題。さらに、沖縄の人達の反戦・反基地闘争が描かれる。その後、第三部の「凌辱」、第四部の「明日へ」と続いていくのである。
中でも驚いたが、第三部の「凌辱」である。
戦闘中の読売村で起った強制自決事件と、その生き残りの女性へのインタピューが強烈だ。さらに、米軍による性暴力の実態と、中でも、県民規模での大規模な抗議行動のきっかけとなる1995年に、米国兵三名による小学生に対する集団暴行事件。その加害者である3名の米兵たちのその後をおいかけている。日本で服役後、米国に戻った3名のうち、首謀者は取材を拒否、もう1名はレイブ殺人事件を起して自殺、でも、1名の男が顔出しのインダビューで、その当時の状況を真摯に語っているのである。
70年以上前、本土防衛するために捨て石して扱われた沖縄。戦時下は日本によって、そして終戦後からは、日米両国によって、差別されてきた歴史があるのだ。そして、いまもなお日本の安全保障という大義名分のもとに、その実態は何も変わらずに続いている。ところが、ぼくたちも、遠く離れた地の不都合な真実は、見ないふりを決め込んでいるにすぎないのである。胸が痛くなるが、それだからこそ、しっかり観るに値する映画である。
余談ながら、親鸞聖人の御絵を背景に、ある方へのインタビューが続く。聖人なら、どうされるだろうかと考えさせられました。
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