さて、『育ち合う人間関係』~真宗とカウンセリングの出会いと交流~は、5章から成り立っている。
A先生が、コンパクトに趣意をまとめておられる。お読み頂くとそれでいいのだが、そこを簡単に押さえておいた。
●第1章「カウンセリングの手引き」
*西光師40歳の小冊子ながら初出版。『暮らしの中のカウンセリング』の原点。
*趣意-仏教を体現して生きるとはどういうことか。仏教本来の同朋精神を喪失し、無意識に 権威的、閉鎖的な態度が身についた仏教者が、カウンセリングに出会うことによって、仏教者(真宗者)の本来性を回復して、真の人間としての成長を遂げるプロセス。特に、仏教者に対して、真摯なカウンセリングの学びを促し、紹介するもの。
*執筆の背景-35歳-平安高校にカウンセリングルーム設立
教師中心授業から生徒中心授業へ。
36歳-「真宗カウンセリング研究会」創立
●第2章「真宗カウンセリング」の成立
*西光師63歳-龍大教授時代の『援助的人間関係』に収録。2冊目の編著書
*趣意-人間疎外がすすむ現代にあって、「人間とは何か」という根本的な問いを提起し、それに応える二つアプローチ、一つは東洋思想を基盤として「真実に人間に成る道」を示した実践体系である仏道と、もう一つは西洋思想を基盤として「人間理解」を示した臨床的実践であるカウンセリング(心理療法)。この両者の出会いに焦点を当てて論考する。
*晩年には、「真宗カウンセリング」から、「DPA」へと展開する。
●第3章「ビハーラ活動と真宗カウンセリング」
*西光師67歳-本願寺派『ビハーラ活動-仏教と医療と福祉のチームワーク』収録
*趣意-ビハーラとは、田宮仁氏が提唱した「仏教を背景として終末期医療施設」の呼称。
ビハーラ活動者の立場や自覚について、その自覚的主体とてしの実践を「真宗カウンセリグ」 と位置づける。
●第4章「真宗カウンセリングの人間観」
*西光師69歳-中西智海先生還暦記念論文集『仏教と人間』収録。翌年の3月で龍大退職
*趣旨-仏教カウンセラーの立場とその自覚について論じる。
藤田清提唱の「仏教カウンセリング」について。
●第5章「浄土真宗の聞法と法座に関する一考察」
*西光師73歳-水谷幸正先生古希記念論文集『仏教教化研究』収録。
*趣意-仏教(真宗)カウンセラーの人間観やその態度に着目し、その仏教(真宗)カウンセラーを生み出す伝統的な土壌について、さらに「真実に人間に成る道とは何か」「共に育ち合う人間関係」の本質ないし創造について論じる。
そして、最後に本書の趣旨として、「一人の専門家を養成より、万人の胸に人間として育ち合う心を育てよう」と呼びかける。
見せかけを捨て、自己のありのままを極めて大切にする。
「いま、ここ」の気づきを鋭くし、実感に溢れてくるところを仮になづけて「真宗カウンセリング」と名づけている。
人に誇れるものではないが、決して崩れない仏法を根底に、相互により深い人間成長・自己実現にむけて、謙虚に話し合い、分かち合い、深めあおうと呼びかけている。
と結ばれていく。
まずは、1年半かけて、第1章の「カウンセリングの手引き」を読んでいきたい。これは、西光先生の原点ともいえるものだ。でも残念ながら、というより悲しいことに、参加者は少なく、しかも熱意のある方もない。さっそく6月の担当者を名乗り出るひとがなかった。
興味のある方、ぜひ、一緒に学びましょう。
*次回は、6月15日(水)夜7時~9時
*会場は、龍谷大学深草学舎の第6共同研究室です。