四十八願のこころ(9)第十八願文
「たとひわれ仏を得たらんに、十方の衆生、至心信楽して、わが国に生ぜんと欲ひて、乃至十念せん。もし生ぜずは、正覚を取らじ。ただ五逆と誹謗正法とばを除く」 (第十八願・至心信楽の願)
「わたくし法蔵が、仏になるとき、全宇宙の生きとし生きる者が、心の底から信じ、わが浄土に生まれたいと願い、わずか十回でも念仏したとして、もしわが国に生まれることがないようなら、わたしくは決してさとりを開きません。ただし、五逆の罪を犯した大罪人と、仏の教え謗るものは除きます。」
第十八願は、四十八願の中で、もっとも根本の願いなので、ご本願と言われます。もし、この十八願がなくて、他の四十七願だけが素晴らしかっても、本願の意味はありません。それは、「十方の衆生よ」と、すべての人々をわが浄土に生まれさせたいと願われました。それは、人間だけではなく、動物や昆虫などの畜生に、地獄や餓鬼で苦しむ者、天上界で楽しみだけの者など、あらゆる世界の生きる者に対して、「苦しみや悲しみ、差別や争いなどの一切の不安のない、わが安楽の国に生まれさせたい。そのためには、わが身を捨ててでも、あなたを幸せにしてみせよう」という、法蔵菩薩さまの大悲心の結晶なのです。そして、「どうかこの願いを信じておくれ。そしてわが名を称えておくれ」と、呼び続けてくださっているのです。そこに「若不生者 不取正覚」のおこころが光ります。
最後に「ただし」と、但し書があるのも、十八願だけです。そこに、両親を殺し、僧を殺し、教団の和を乱し、仏を傷つけるものや、仏法を謗るものは除くとあります。「すべての人々を救いたい」の願いと、この「唯除」のお心は、矛盾するように見えます。しかし、この抑止(おくし)の一文は、大恩あるものや仏様に背く、わたしの姿そのものです。そのことで、いよいよこのご本願が、誰をお目当てに建てられたのかが、明かになってきます。みんなを救うご本願は、如来さまに背くわたくし一人のためのご苦労だったのです。
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