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『ルンタ』

 もう1本のチベット映画は『ルンタ』。『蟻の兵隊』 http://karimon.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/post_f960.htmlや『先祖になる』などの傑作ドキュメンターを監督している池谷薫の作品。

 チベットで続く中国に抗議する焼身自殺者を見つめ、ブログに発信し続けている日本人、中原一博を追いかけることで、チベット人の精神に迫る映画だ。

 聞き慣れない『ルンタ』とは、チベット語で、風の馬というの意味がある。少し前に『風の馬』という映画も観たが、そちらは、チベットの現状をドラマ化したものだった。チベットの峠だけなく、インド仏跡を訪れると風の道には必ず、大量の五色のタルチョがはためいていた。そのタルチョに描かれている図柄のひとつがこの「風の馬」というのである。

 国家の暴力によって、自由を奪われる人達がいる。平気でいのちが奪われ、民族のアイディティも犯されていく。言語も、風習も、移動も、そして彼らにとっていちばん大切な信仰さえもだ。平和的なデモも、圧倒的な兵器で弾圧される。現実をありのまま発言しただけで、数多くの僧侶が殺戮され、逮捕され拷問され、中には拉致されたまま闇に消えたものも多数いるのだ。

 非暴力の抗議の中から、抗議のための焼身自殺者が次々と生まれてくる。

 しかし、チベット問題に関心のある人からも、批判の声がある。平和で、安全な国いるものには、その行いを理解するのは難しい。「いのちを粗末にするな」と言うだけなら、簡単なことだ。だか、彼らの仏教、大乗仏教に根ざして生きざまを目にすると、そこに深い葛藤を超えた、安らかな決意が感じられもする。生きとし生きるものの幸せを願い、慈悲心を起し、利他のために生きている、まさに菩薩として歩んできた人達でもある。

 とはいっても、正直、その行為には違和感を感じずにはおれない。

 男がいる。女がいる。若者が多いが、年輩の方もいる。この映画は、そんな焼身自殺者のひとりひとりの生きざまをおいかけ、彼れが残したメッセージを丁寧に掘り起こしている日本人がいる。悲しみや憤りと、そして葛藤を抱えながら、その現実をしっかり見つめ、そして発信し続けていく水先案内人と共に、彼らが焼身自殺した場所に立ち、直前までの行動を追いかけ、また残された遺書や言葉を掘り起こしながら、そのひとつひとつを「事件」として処理するのではなく、同じ尊い「いのち」が失われている現実を目の当たりにしていくしかない。

 業縁としかいいようがない深い深い悲しみが、そこに立ち上がってくる。

 ああ 悲しいなー。南無阿弥陀仏

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