「仏法東漸」~仏教の典籍と美術~
先週の木曜日、終了間際に、国立京都博物館の「仏法東漸」~仏教の典籍と美術~を観た。
http://www.kyohaku.go.jp/jp/project/daizoe.html
壮観というのとは少し異なるが、静かな感動があった。
最澄、空海、法然、証空、親鸞という、日本仏教の巨人たちの肖像画と、彼らの国宝の直筆の数々が、体系的に展示されていた。
他にも、禅宗では臨済宗を中心に、国宝の墨跡や肖像画が展示されている。日蓮系統のものはなかったのは、京都に本山があったり、関係大学がある縁で、天台、真言、臨済、浄土、西山、そして浄土真宗の各本山の逸品が展示されていたからだ。それでも、平安仏教以降の日本仏教の流れが、通史的に俯瞰できるようであった。
インドで興った仏教は、大きく、スリランカや東南アジアに拡がった南方仏教と、中央アジアを経て、中国、朝鮮半島、そして日本に至る北方仏教がある。北方仏教は、主に大乗仏教として発展するが、独自に発展するチベット仏教以外は、ほぼ漢字文化圏にもあたるのだ。
釈尊の教えは、もともと口誦されたものだ。それが、結集によって、ついに文字となり、「経」として残されてきた。最初は、紙ではなく、貝葉に梵語で書かれた。それが、インドに入った西域や中国の僧によって中央アジア、シルクロードにもたらされ、中国に入り、漢文に翻訳されたのである。中国仏教は、翻訳仏教だといっていい。同時に、中国は、文字と、紙と印刷技術に長けた最新の文化国家だったので、お経は印刷され、膨大な量の経文が翻訳されるが、それが体系的にまとめられていき、「一切経」とか「大蔵経」と呼ばれるものになる。
ちなみに、それが日本に入ったとき、日本人は、それを日本語訳するのてはなく、漢文を日本語読みする技を身につけていくのである。
本展覧会は、第一部で、釈尊の教えと題して、大蔵経を中心にさまざまなお経が展示されていた。
そして、第二部は、「教えの拡がり」と題してだが、日本での仏教の受容と、日本的展開を歴史的に追っていた。
日本では、平安時代になって、最澄、空海という二大巨人が現れて、本格的な日本的な発展を遂げることになる。そこから、鎌倉時代にはいり、禅系統や浄土系統へと展開して、日本民衆の仏教へとなっていくのである。
何より、仏教のスーパースターたちの、直筆の書物に触れるだけでも、それぞれの個性が窺い知れる。もちろん、日本の三筆のひとり、弘法大師の書などもいいが、やはり、浄土のお祖師方のものに心を奪われた。
『選擇集』の題字などを書かれた、法然聖人の力強いながらも、肉厚で、穏やかな書は、晩年か。一方、親鸞様は、50代の書なので、跳ねるように躍動的だ。国宝の『教行信証』坂東本は、「教行」「信」「証」「真仏土」「化身土」本、「化身土」末の六冊が、すべて揃っていた。正信偈の箇所が開いていた。
ちなみに展覧会の最後の展示は、高僧ではない「恵信尼公」の肖像画で終わるのも、象徴的な感じがした。仏法東漸とは、仏教が東へ、東へと伝播してくるのことだが、同時に庶民の仏教になっていくのであろう。
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