« 悪戦苦闘 | トップページ | 高山支部法座~一願 南無阿弥陀仏~ »

『セッション』

 若い映画作家が、ドラマーを目指していた自らの実体験を元にした傑作。

 6月公開の『グロリア~明日への行進』以外、今年のアカデミー賞作品賞にノミネートされた7作品をすべて観たが、『セッション』がいちばん斬新で、文句なく面白かった。(ほかにも『イミテーション・ゲーム~エニグマと天才数学者の秘密』 ・『6才のボクが、大人になるまで』 などがお気に入りで、作品賞の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』も面白かったけれど、それほど斬新だとは思わなかった)。

 名門音楽学校に入学し、カリスマ教授フレッチャー(J・K・シモンズ)の有名バンドに参加を許されたたニーマン(マイルズ・テラー)。エリート演奏家としての道が開いたかにみえたが、そこには、想像を絶する教授のシゴキが待っていた。超サディスティックな指導に反発しながらも、恋人や家族との関係まで断って、一心不乱に教授の異常な要求に答えようとする若者との師弟関係がすごい。

 天才を見いだすために、人格を否定し、能力や体力の限界を超えた指導をする教師と、それにくらいつく生徒の異様なまでの師弟関係。その異常さと迫力、一発束髪の不穏な空気感と、行き詰まる緊張感が、画面からもほとばしってきて、こちらのからだが硬くなるほどだ。

 冒頭からあった緊張感は、最後まで続いて、予測できない展開へと進んでいく。後半、教授が緩み、人間性をみせ自己を開く場面がある。が、それにすら、後にまっているどんでん返しの伏線にすぎなかった。僕自身も、ある時は指導者である教授に投影したり、逆に猛烈に反発したり、こころ揺さぶられた。

 少し強く迫られた程度で傷つき、すぐに「ドクハラ」などとわめき出す、ぬるま湯の世界にいるものには、到底知ることのできない天才の狂気の世界。

 帰宅後、さっそく『Bird~チャーリー・パーカの伝説』を読み返した。

|

« 悪戦苦闘 | トップページ | 高山支部法座~一願 南無阿弥陀仏~ »

映画(アメリカ・その他)」カテゴリの記事