『徘徊~ママリン87歳の夏』~認知症を考える映画・第2弾~
今年は、認知症について考えさらせれるドキュメンター映画を続けてみている。自分自身にも身近なので目につきやすいということもあるが、急増する認知症や介護問題は、日本や先進国での喫緊の課題なので、上映機会も増えている。皆さんにとっても、関心のある身近なテーマなのである。
第一弾の息子介護をテーマにして『和ちゃんとオレ』については、以前触れた。
http://karimon.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-3d18.html
今回は、認知症や介護問題を考えさせられる映画の第二弾で、『徘徊~ママリン87歳の夏』をみなみ会館で観る。
大阪北浜。都会のど真ん中に住む、87歳の認知症の母と、それを見守る55歳の娘の温かい物語だ。
認知症の中でも、徘徊の母がテーマ。一旦、徘徊モードに入ると昼夜関係なくはげしい徘徊が始まるのだ。生まれた故郷、実家の門司に帰ろうと、都会の中を徘徊しつづける。
とにかく、母と娘のやりとりが面白い。完全にチグハグで、時に感情的に激し爆発させる母親を、まるで駄々っ子をあやすように付き合う娘(母と子が逆転だ)が、ユーモアたっぷりに描かれる。徘徊を責めることもなく、見守りながら、母に合わせつつも、けっして我慢したりするのでもない、彼女の姿勢がすばらしい。
「ほんとうの決断とは、状況そのものを引き受けること」という達観したコメントにあるように、たとえ認知症になったとしても、それもまた一度だけの人生の一部であり、そこに関わるのもまた、一度だけの自分の人生の一部で、決して自分の人生が狂わされたのでもないのだという姿勢が、このゆとりを生み出しているかのようだ。
都会のど真ん中の孤立した冷たいイメージとはまったく逆で、二人を見守り、時には援助する喫茶店の店主などのご近所さんの、距離を置いた温かさがまたいい。街を行き交う人々も、けっこう親切である。こんな姿をみると、日本もまだまだ捨てたものじゃないなと思った。
それにしても、老いてなお、歩き続けるその執念と、エネルギーに、ある意味、人間のすごさを感じさせられた。
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