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シンガポール映画『イロイロ』~ぬくもりの記憶~

 「娘が、いまシンガポールに住んでいるので、訪ねてきました。」という同人があったが、「輪読法座」が終わってから、みなみ会館で、生まれて初めてシンガポールの映画を見た。新人監督の評価は高かったが、退屈そうなので、パスいつもりでした。ところが、奇しくも、シンガポールの国父、リー・クアンユー元首相が、91歳で逝去が伝えられて、シンガポールの記事にけっこう触れて、興味が湧いてきた。

 『イロイロ』~ぬくもりの記憶~は、監督の幼少期の実体験に基づいている。

 特別な大事件が起こるわけでもないが、反抗期の少年と、フィリピン人家政婦の交流を中心とした、中華系(華僑)一家の小さな事件の物語である。

 時代は1997年。それほど大昔ではない。が、ブラウン管のPCモニターに、大きなケイタイ、テレカでの電話など、わずか20年前ほどのことが、もうすっかり忘れている。
 しっかりものの妻の尻にひかれた冴えない夫は、アジア通貨危機で、株で大損し、しかもリストラの憂き目にあう。共働き身重の妻との関係もうまくいっているように思えない。彼女は、問題ばかり起こす反抗期の一人息子に、手を焼いて、家庭と仕事で、心の休まるようすはない。

 そこにフィリピンからの住みこみの家政婦がやってくる。彼女もまた、家庭の事情で、まだ1歳の子供、妹夫婦に預けている。シングルマザーらしくて、まとまったお金が必要な理由があるようだ。ますます反抗し、いじわるまでする子供だったが、何度かのぶつかりあいを通じて、孤独な二人が徐々に彼女に心を開いていく。

 しかし、父親の経済事情は悪化し、母親のように息子と仲良くなった家政婦に、母親が嫉妬をし出すが、このあたりの微妙な関係が、なかなか面白かった。
 でも、全般には物足りなさを感じたが、教育事情、住宅事情、そしてアジアの格差の問題。華僑式の葬儀や多民族国家であり、さまざまな民族、宗教などがある、等身大の国情が垣間見れるのも、こういう映画の楽しみ。

 ちなみに、タイトルは、邦題で「イロイロあります」の「イロイロ」や、色とりどりの意味と思っていたが、フィリピン人家政婦の出身地「イロイロ島」から。

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