大分の想い出
ぼくは、大分はこれで3度目だ。新しいところでは、聞法旅行で、中津の福沢諭吉記念館を訪ねたことがある。今回は、車窓からと、会場周辺の狭間という田舎の風景だけ味わった。
初めは40年前、小学生の時ことだ。家族旅行で、10泊11日も、父の運転する車で九州を旅したことがある。父親任せの気軽な旅で、どんなルートだったかは定かではないが、熊本の阿蘇から大分に入ったようだ。
九重連峰の麓で1泊し、日田や耶馬渓を見た。ここで、生まれて初めてカメラで写真を撮られてもらった。いまと違って、フィルムの一眼レフでの撮影は、後日、ピンポケで出来上がってきた。まだ鄙びた静かな温泉街だった湯布院でも1泊。別府にも泊まって、臼杵石仏や別府での地獄めぐり、水族館や高崎山にも行った。八幡の善定寺などでの法座も兼ねていたとはいえ、家族で、10日もずいぶん贅沢な旅だった。その2年前にも、北陸から越後、信濃から関東そして、東海へという親鸞聖人、蓮如上人のご旧跡めぐりで、10泊の旅をしている。
でも、この時の一番の想い出は、帰路のフェリーの中のことだ。疲労から体調を崩して、初めてゼンソクが起こって、みんなに迷惑をかけた。2家族が入る準個室だったので、両親が、平身低頭していた姿を覚えている。
咳き込んで寝られないぼくを、父が、フェリーのデッキに連れ出してくれた。澱んだ空気を流すように、海を渡る風が心地よい。10日間のドライブで疲れていたであろう。運転中は、騒いでいるぼくたちを、よく叱る父でもあったが、その時の慈愛に満ちた眼が印象的だった。
夜明け直後の朝日が、海上に光輝いている。
初めて親のご恩徳の一端を身に沁みて感じさせられた瞬間だった。
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