6月の聖典講座(2)声聞衆
さて、六事成就のうち衆成就の声聞衆であるが、なんとあの霊鷲山の山頂に、一万二千人の仏弟子が集う。その主な方々だけでも、三十一名の名が上がるが、このまま仏教教団の成立と広がりを現すものでもある。4つのグループに分かれるが、
(1)尊者(尊称で以下略)1了本際・2正願・3正語・4大号・5仁賢
釈尊の修行時代の仲間で、サルナートでの初転法輪の際の五名の比丘。
ここに、仏・法・僧の三宝が揃う。釈尊も含めて、六名の阿羅漢が誕生するのである。
了本際が、最初に阿羅漢に達する阿若?陳如(あんにゃきょうちんにょ)のこと。
または、正願のその立派な威儀をみて、舎利弗・目蓮が出家した、阿説侍多。
(2)6離垢・7名聞・8善実・9具足・10牛王
次で出家するベナレスの長者、耶舍(やしゃ・ここでは名聞)と、四名の友人。他に、50名の友も出家し、阿羅漢となる。
( 3)優楼頻?迦葉・12伽耶迦葉・13那提迦葉 もともと拝火教徒であった、三兄弟・迦葉(カッサパ)で、千名の弟子と出家。
(
4)14摩訶迦葉(頭陀第一)・15舎利弗(智慧第一)・16大目ケン連(=目蓮・神通第一)
17劫賓那(問答第一)・18大住・19大浄志・20摩訶周那・21満願子(=富楼那・
説法第一)・22離障(=阿那律・天眼第一)・23流潅・24堅伏・25面王・26異乗・
27仁性(=須菩提・解空第一)・28嘉楽・29善来・30羅云(=羅ゴ羅・密行第一)・31阿難(多聞第一)
以上、十大弟子を含めた教団の上首たる人々。ここでは、舎利弗・目蓮よりも、大迦葉が上位に列せられている。30羅云は、釈尊の王子時代の実子。
ところで、
「みなこれらのごとき上首たるものなり」(魏訳『無量寿経』)とあるが、サンスクリット本では
「…(当時)一人だけを除いて、すなわち修行の道においてなすべきところが残っ ていたアーナンダを除いて、みな長老であり、直々の大弟子であった。」(『大無量寿経』岩波文庫)となっている。
なぜ、多聞第一で、釈尊の従者だった、阿難尊者が、釈尊在世に阿羅漢に至ること が出来なかったのかは、「自燈明・法燈明」の記事や、7月1日発行の華光誌73巻3号・巻頭言「師に握拳なし」を参照しながら、お考えいただくとして、ではなぜ、その阿難尊者が、『無量寿経』の聴衆の代表になっているのかも味わった。
誰をお目当てに大経、本願が説かれたのかを味わうと、自ずから如来様のお心が明らかになってくるのだ。
(つづく)4
| 固定リンク
「聖典講座」カテゴリの記事
- 『口伝鈔』第七条「凡夫往生章」(2023.01.29)
- 『口伝鈔』第五条「仏智護念章」(2022.11.13)
- 『口伝鈔』第四条(2022.10.16)
- 聖典講座『口伝鈔』(1)(2022.10.15)
- 『御伝鈔』下巻第七段(3)「~廟堂創立の経緯とその後~(2022.02.22)