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成長力を信じる

 いわゆる「意志療法」の創始者で、オットー・ランクは、クライエント中心療法のカール・ロジャーズの先駆者として、その理論の道を開いた理論家・臨床家としての正しく評価されるべき人物だといわれています。ジャイムス・リーバーマンによると、ロジャーズ同様に、ランクもまた、

一人一人の人間の持つ価値を深く信じ、クライエントには、四苦八苦しながらでも自分の道を前に向かって進んでいく力があるのだというとこを、深く信じていたのです。

というのです。この場合の四苦八苦は、いわゆる仏教本来の用法ではなく、「もがき苦しみながら」という通俗的な意味なのかもしれませんが、それはともかく、どんな人にも、その存在価値があることを深く信じ、そして、どんなにもがき苦しみながらであっても、自分の道を前に進んでいくという成長力を、また深く信じるというのです。

 クライエントが持っている成長「力」という「力」を信じる。これは、言うは易し、行うは難しの深い言葉です。

 いまは治療にしても、教育にしても、また宗教にしても、それはカウンセラー(もしくは医者や先生、宗教家など)にしろ、クライエント(もしくは患者、生徒、信者など)にしても、対症療法であっても、即効的に、目に見える効果を求めています。そして、目先の結果だけで極端に評価されるという風潮があります。だから、互いにすぐにあらわれる成果を求めている。そのためには、専門家の専門的な指示やアドバイスこそが、いちばん大切になってきます。

 しかし、成長力を信じるということは、クライエントを信じて待つということなので、専門家による問題解決のための専門的な指示やアドバスイ、解釈で、速攻的な解決をするのではなく、クライエント自身が持っている問題に立ち向かっていく力を信じ、促進する働きだといっていいのでしょう。たがら、苦悩するクライエントの力を信じて、寄り添っていくということになるのでしょう。

 成長力を、角度を変えて表現したら、悩む力となるような気もします。実は、「力」がないと、どう悩んだいいのか、その悩み方もわからないものです。しかし、カウンセラーとの関係において、ほんとうに受容的で、安心の場があるのなら、どれだけ七転八倒し悩み苦しみながらであっても、自分の道を前に向かって進んでいける、その「権利」が尊重されていくのだという風にも読めるな、とぼくには思えました。

 おかげて、気付きのちょっとしたヒントになった気がします。

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