『地獄でなぜ悪い』
けっして、開き直った求道者の捨てぜりふではありません。
園子温監督のコメディー娯楽作のタイトル。
地獄とつく映画は、けっこうある。タイトルが面白いだけでは観ないだろうが、監督が園子温となれば見ないわけにはいかない。
最近の彼の作品は、欠かさずに観ている。カルト宗教教団を材料にもした長尺の『愛のむきだし』や、猟奇的連続殺人をモチーフにした『冷たい熱帯魚』(でんでんの死体をバラバラにするシーンが、なんともユニークですごかったし、彼の作品でいちばんよかった)、OL殺人事件(事実は国際的な冤罪事件になった)を元ネタに、人間の裏・表を暴く『恋の罪』など、人によっては嫌悪感をもつようなアナーキーで、エロ・グロ(出演する女性がみんなエロい。結局、監督と結婚した人もあるが)な映像作品の印象が強い。
または、覚悟をもって東日本大震災の被災地で撮影たれた『ヒミズ』や、制御不能となった原発事故を通じて日本の今を皮肉った『希望の国』などの問題作も送り出している。
一方、『ちゃんと伝える』http://karimon.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-31a9.htmlのような静かな佳作もあるが、 賛否両論、話題性のある作品が多くて、一筋縄ではいかない魅力的な監督だ。
でも、これは、痛快なコメディーで、ある意味で期待が外れる。でも、ヤクザって、けっこう笑いにしやすいのかもしれない。ひょんなことから、映画を製作をすくことになった暴力団と、長年の映画オタクが出会い、敵対する組との出入りを、35ミリのキャメラに收めることになるというもの。後半は、派手なアクション(斬りあい)シーンが続く。だから、やたら血は流れ、首は飛び、刀や弾が飛び交うのだが、そこにまったくシリアスはなく、わざとチープな作り物感がでているからだ。これは明らかに、日本の任侠映画や、プルース・リーのオマージュが散りばめられ、同時に、フィルム映画や青臭い自主映画への愛情が感じられる作品だ。そして、誰も居なくなるのか?
このところ、ぼくは、映画館で居眠りをすることが多い。疲れてるのか、シートが安らぎの場かはしならいが、かなりの外国の佳作でも退屈なシーンがあるからだが、これはレイトショーたったにもかかわらず、まったく眠たくはなることはなかった。まあ、それでもお勧めというわけではないけれど、楽しめた1本。やっぱり血や銃撃場面は生理的に苦手な方もあるだろうし…。
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