グロリアと3人のセラピスト
真カ研の月例会で、ブライアン・ソーン著の『カール・ロジャーズ』を輪読しているが、理論篇が終わり、臨床実践篇に入るに先立って、実際のロジャーズの面談ビデオを見ることにした。以前、研究会で、「ミス・マン」の面接ビデオを観たので、今回は有名な「グロリアと3人のセラピスト」の中から、ロジャーズ部分を選んだ。
ビデオは、悩みを抱えるグロリアという30代のシングルマザーの女性に対して、3名の著名な流派の創始者たちが、それぞれの手法で面接する場面を納めたものだ。しかも、単なる記録映像というだけでなく、冒頭の映像などは映画仕立てのタイトルロールになっている。グロリアも、堂々としたなかなか魅力的な女性で、いきなり自分の性生活の悩みなどを吐露したり、感情を顕したりと、見る側の興味が持てる。解説やグロリア(クライエント)の振り返りも入っているので、見応えがある。何よりも、ビッグネーム3名の、なまの映像が並ぶだけでもすごい。
1)「来談者中心療法」の、カール・ロジャーズ博士
2)「ゲシュタルト療法」の、フレデリック・パールズ博士
3)「論理療法」の、アバート・エリス博士
という、異なる独自のアプローチをするカウンセリングの創始者たちが、それぞれの手法で面接をするのだが、その特色がよくあられわている。彼女の最後のコメントにも、それぞれのアプローチの違いが顕著になっていて、面白い。
それにしても、この顔ぶれはすごい! もし、日本仏教でいうならば、同時期に生きられた親鸞、日蓮、道元が、同じ求道者に御示談するようなものだななどと、意味のない譬えがよぎるほどの豪華なメンパー。それが同じクライエントに、初回のたった30分ほどの面接時間で、一発勝負のカメラの前に立つのだから、この自己を開いた態度だけでも、3人のすごさがわかる。
真カ研のプログラムは、カウンセラーになるためのトレニング法である「ミニカン」的な傾聴が主力となっているため、これがロジャーズのカウンセリングそのものだと思っている参加者もおられるようで、このロジューズのアプローチは、ある意味で驚きだったようだ。
ロジャーズに関しては、彼自身は、満足のいく面接だったようだし、その後、グロリアは、3名のうちロジャーズを選ぶことになる。ソーン氏も、ロジャーズのカウンセリングのエッセンス、特にカウンセラーの3条件が遺憾なく発揮されていてる面談だと高く評価している。しかし、あまりよくないという人もあって、評価の分かれる面接だ。
一見すると、自己一致して、自己開示する場面が、逆転移だといわれる批判も分からなくはないほど、かなり微妙なやりとりだ。時間の制約か、高名な3名の勝負という力みがあるのか、かなり急ぎすぎの感もある。
しかし、ここは、その場の当事者でなければ分からない、ふたりのだけの関係の深さもあるだろう。何よりも、一貫して、専門家といして権威を被らず、誠実で、透明であり、その時、その時の自分自身であることだけは確かで、ここが、逆に、逆転移といわれる言葉を呼んでいるようにも思えるので、この微妙な感じをどうとらえるかで、評価が分かれているのかもしれない。いずれにせよ、こんな面接ビデオがあること自体がすばらしい。
ちなみに、ネットで調べると、逐語録付きで、3巻で「21万円也」!!という超高価な代物で、びっくり。現在では、入手困難のようだが、大むかしに、研究会で購入した代物で、ぼくたちは得をさせてもらった。
http://www.iryo.co.jp/teamiryo/PSY_VIDEO/PSY_V011.htm
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