『北のカナリアたち』
『北のカナリアたち』は、吉永小百合が主演の北海道の離島という僻地の小さな分校を舞台にしたもの。女優と、設定を考えたら、「二十四の瞳」のようなヒューマニズム溢れる温かな雰囲気を予感。最初はパスの予定だったけど、友人の「泣けたよ」との評判を聞いて、観る映画に仕分け。
それが、不倫や殺人をベースにしたサスペンス調の群像劇で、予想とは違った展開。でも違った意味で、泣けました。さすがに、「あなたへ」の高倉健といい、この吉永小百合といい、配役の年齢設定には少々無理があるけどね。でも、物語はしっかりしていて、面白かった。一つの殺人事件をきっかけに、平和な僻地の分校でおこった過去の悲劇の事件が、それぞれの立場で明かになっていく。事件は、それぞれの人物のその後の人生に、罪悪感となり、トラウマとなり、深い影と葛藤を落としていく。心理描写もしっかりしたサスペンスとミステリアーな部分の謎解きが、表面的な善悪ではわからなかった、個々人の闇や苦しみと結びつき、最後には、解きほぐされて結びついていく展開が見事。定年退職した先生が、成人した教え子を一人一人と会っていくというくだりも、最後の伏線になって効いているのかなーと。
北海道の離島、広大な自然の風景と、いろいろな科白で泣いちゃいました。湊かなえの原作で、ラストで阪本順治監督のクレジットをみて、納得。
あいかわらず、マイナーな外国映画が中心だけれども、たまに観るメジャーの日本映画も、なかなか力作揃いで。ほかにも、大阪の街を舞台にした男たらの金塊強奪計画を、粗い画質そのままの、荒っぽさがよかった井筒和幸監督の『黄金を抱いて翔べ』、そして、周防正行監督が、恋に傷つき絶望した女医(草刈民代)と、重度のぜんそく患者(役所広司)との深い絆から、医療行為か、故意の殺人かを巡る、辣腕検察官(大沢たかお)とのやりとりもスリリング、かつ命の尊厳を考えさせられた『終の信託』あたりも、面白かった。
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