輪廻といのち~倶舍の講義
大遠忌前の9月上旬のこと。散髪の帰り、龍大の大宮学舍前で、1枚のポスターが、目に留まった。
仏教学科主催の特別講義の案内である。龍大仏教学科で研鑚されている伝統的な仏教学-倶舍、唯識、華厳、天台に加えて西域の五分野を、一般への連続した無料の公開講座として開講されているというのである。
「倶舍~絶ゆることなき法の流れ~」
タイトルも、ポスターもなかなかいい。
今回は、仏教の基礎学ともいうべき、倶舍論だ。昔から、「唯識三年、倶舍八年」といわれるように、仏教のテキストでありながら、一人前にわかるには八年もかかるという代物。といっても、昔の大学では、真宗学を宗乗、仏教学を余乗と称して、真宗学の学生も、宗乗のみならず、余乗の基礎は学んでいた。しかし、ぼくが学生のころには、専門化、細分化されるばかりで、総花的な学びの場でなくなっていたことは、以前にも触れている。
http://karimon.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_164e.html
だから、仏教の基礎学といっても、倶舍のことは素人同然で何も知らない。といっても、華光のご法のお勧めには、倶舍からの三世や業識、思業や思己業の内省の問題など、知らないだけで間接的に影響も受けている。伊藤先生や悟朗先生が勉強されていたからである。
講義は、すでに前期分は済んでいたが、これから「説一切有部の三世実有説」、「輪廻といのち~アビダルマの業・輪廻説に関係して」など、魅力的なテーマが並んでいる。時間的にも参加可能だったが、うっかり「三世実有説」の回を聞き逃して、今回が初聴講となった。
冒頭こそ、一般にも理解できるような、やさしい輪廻転生の話だったが、諸法の無我を明かすための組織を全九品でまとめたという倶舍の組織論に入ると、俄然、専門用語が増えて難しくなってきた。
1、界品 諸法の体(諸法説)--(諸法の体用)
2、根品 諸法の用(因果説)--有漏無漏総説
-諸法の事(顕正)
3、世品 果--苦諦
4、業品 因--集諦-有漏l(輪廻説)
5、随眠品 縁--
--有漏無漏別説
6、賢聖品 果--滅諦
7、智品 因--道諦-無漏(修道説)
8、定品 縁
9、破執我品-------------- 無我の理(破邪)
図表なので、縦や括り括弧が使えなず、ここに示すには限界があるが、なかでも、九番目がおもしろかった。一般的な、または特定部派の有「我」論を排斥しながら、認識の主体、輪廻の主体、業の担い手は何なのかを、無我の立場から説明しようというもので、種子説が採用され、ここから唯識のアラヤ識説へ展開するそうだ。
そこには、輪廻の主体の二潮流のひとつである主業説と、その有部の業論を批判する形で、世親(天親)菩薩の主識説が説かれていく背景の説明を通じて、ブッタの無我説に決して矛盾しないものとして、輪廻転生説を取り上げられていった。
しかし、現代では、原始教典の原典にあたりながら、ブッタの根本思想に輪廻転生説があったかどうかは不透明、もしくは核心部ではなったという流れが強くあるが、その点の反論は、既存(かなり古い)の説明で終わり、「ここは難しいので」とサッーと飛ばれたのは、一般講義なので致し方なしだろう。
隔週であるが、次は、名大の名誉教授の講義で「経量部」の話題。
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